批判の多いサッカーくじの対象を、バスケットボールのBリーグにも拡大する法改訂が決まった。
多くの反対を押し切って強引に導入された、文科省が胴元の公営ギャンブルは、20年余りを経て、反省のないまま対象競技を広げ、試合ごとの賭けなどを認める、より射幸心をあおる姿に変質する危険が強まった。
2002年ワールドカップ開催をにらみ、スポーツ振興を名目に、Jリーグを対象にして、全試合の勝ち負けを予想する形で始まったサッカーくじだが、当たりが少ないことなどから売り上げが伸びず、スポーツ助成が先細りとなり、一時は廃止の声もあがった。
それでも、予想を必要としない宝くじのような形など、さまざまな商品が売り出されたが、売り上げは頭打ちで、プロ野球を含め、多くの競技への拡大が企図されていた。
しかし、ギャンブルだから、八百長の誘いなど競技者への悪影響が懸念され、二の足を踏む競技が多かった。はずれた試合結果に怒って、競技者が中傷される事態も海外では報告された。
くじ不振の背景には、スポーツ振興は国が責任を果たすべきとの国民意識の高まりがあり、国民のスポーツ権を明記したスポーツ基本法が生まれた。
しかし、国の振興策は五輪でのメダル獲得に偏重して、国民全体のスポーツの発展は、おざなりにされてきた。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策で観客制限などに追い込まれたJリーグでは、少なくないクラブの存続が危ぶまれ、Bリーグは8割近いクラブが赤字の危機にあるという。
とりわけ、東京五輪後の国のスポーツ振興策が見えず、公営ギャンブルからの特別の支援を期待しても不思議はない。
スポーツはギャンブルに頼れ、と言わんばかりの国の姿勢を日本維新の会や立憲民主党までが手助けして、国内競技の将来を危うくしている。
弱みにつけ込むような、競技者と競技を歪める恐れのある公営ギャンブル化の促進は、カジノ誘致と同様に、健全な国民生活の発展を阻害する
大野晃(スポーツジャーナリスト)