2020年12月15日

【大阪都構想】 住民投票 市民の良識 土壇場で作動=幸田泉

大阪都構想反対の運動・幸田泉さん撮影.jpg

政令指定都市の大阪市を廃止して特別区に分割する「大阪都構想」は、11月1日の住民投票でまたもや「反対多数」となった。5年前の最初の住民投票は投票率66・83%、賛成69万4844票、反対70万5585票。今回は投票率62・35%、賛成67万5829票、反対69万2996票。住民投票を取り巻く状況は5年前と比べ、いくつかの点で変化したが、結果は非常によく似た「僅差で否決」だった。

ムクッと起きる
大阪市を廃止して大阪府に権限を集中させる大阪都構想は、松井一郎・大阪市長や橋下徹・元大阪市長らが、それぞれ大阪府議、大阪府知事時代に設立した地域政党「大阪維新の会」(以下、維新)の党是である。つまり、大阪都構想は「大阪府の真ん中でデカい顔している大阪市をつぶす」という政治家たちの野望から生まれた構想であって、大阪市民が「政令指定都市をやめたい」とか「四つか五つに分割してほしい」と希望していたわけではない。だから、大阪都構想はどんな美辞麗句で飾り立てても、結局「押し売り」なのだ。
維新は大阪府内の選挙でほぼ勝ち続けているにもかかわらず、住民投票は何度やっても否決されるのは、「いらんもんはいらん」という市民の良識が土壇場で作動するからにほかならない。
大阪市内の選挙の投票率は50%前後なので、有権者約220万人のうち約100万人は政治的に「寝ている人々」である。ところが住民投票となると、このうち20万〜30万人がムクッと起きて投票所へ向かう。そしてその多くが「反対票」を投じる。「これを買えば人生すべてうまくいく」と霊感商法まがいのセールストークを展開する押し売りを追い払うためだ。この行動パターンを取る人々が、結果的に大阪市を救っている。

 選管が「廃止」明示
「2度目の否決」となった具体的要因としてはまず、大阪市選挙管理委員会が「住民投票は大阪市を廃止するか否か」を問うものだとはっきりさせたことが挙げられる。2015年の最初の住民投票は「特別区設置住民投票」という名称だったのを、今回は「大阪市廃止・特別区設置住民投票」とした。5年前の住民投票の際、反対派が「大阪市が無くなる」と訴えたのに対し、賛成運動を率いた維新代表(当時)の橋下・大阪市長(当時)は「大阪市は無くならない、大阪市役所が無くなるだけ」とひどい詭弁を弄した。以来、維新政治家たちはこの5年間、「大阪市は無くならない。反対派が不安を煽っている」などと真っ赤な嘘を吐き続けてきたが、選管の判断で「大阪市廃止」が投票用紙にも書き込まれ、投票を周知するための看板、垂れ幕、ポスター、地下街などでの放送でも「大阪市廃止」の文言が登場。ようやくこの当たり前の真実を土台にして賛否の論戦ができるようになった。
 
学会票も割れる
また、5年前の住民投票では事実上、「反対」の立場で動いた公明党は、維新との政治的駆け引きの末、屈服させられる形で「賛成」を表明するに至ったが、支持母体の創価学会の会員は公明党の方針に従わなかった。大阪市内で12万〜13万票と言われる創価学会票はほぼ真っ二つに割れ、ギリギリのところで大阪市廃止を食い止めるというとんでもないバランス感覚を発揮した。
 住民投票戦では、政党関係者だけでなく、多くの市井の人々が「いてもたってもいられない」とボランティアで走り回った。マスコミ報道では大阪都構想は政治闘争の面ばかりが強調されるが、市民生活をかけた「権力VS市民」の戦いが確実に存在していた。
住民投票で2度否決されても「日本維新の会」の国会議員は「3度目に挑戦する」などとツイッターで発信し、松井市長は条例化によって大阪市の都市計画権限を大阪府に移す方針を表明。大阪市の住民自治は引き続き存亡の危機にある。
大阪市民が今から取り組むべきは、次の市長選挙で政党候補ではない真の「市民候補」を立てる道を模索することだ。党利党略優先の維新候補と住民自治優先の市民候補との戦いに持ち込めば、大阪市長の座を維新から奪還するのは夢ではない。
 幸田泉(ジャーナリスト)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年11月25日号

posted by JCJ at 01:00 | 関西 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする