2020年12月18日

【リレー時評】頑張れ、注目の機関紙ジャーナリズム=藤森 研(JCJ代表委員)

 2020年のJCJ賞は、小さいが重要な一つの歴史を刻んだ。最も優れたジャーナリズム活動としての大賞に、「安倍晋三首相の『桜を見る会』私物化スクープと一連の報道」(しんぶん赤旗日曜版)を選んだのだ。安倍政権の体質を暴いた調査報道だった。
 しんぶん赤旗日曜版は日本共産党の機関紙だ。機関紙がJCJ賞の最優秀賞となるのは過去に一例だけ。1969年、日雇い労働者らがつくる全日本自由労働組合情宣部の「じかたび」がJCJ賞を受賞している(当時はJCJ賞と奨励賞があり前者が本賞とされた)。政党機関紙の大賞は、今回が初めてだ。

 日曜版編集部による『「桜を見る会」疑惑 赤旗スクープは、こうして生まれた!』に、取材の内側が明かされている。
 SNS上で「桜を見る会」に関連して「後援会」の言葉が頻出する。これは、公的行事の私物化ではないのか?日曜版の記者たちはその疑いを胸に、安倍首相(当時)の地元・山口県に入った。共産党市議の紹介で自民党関係者に匿名で話を聞き、集合写真から参加者を割り出しては訪ねた。足で稼ぐ取材だ。
 長門市では、ある母親が「桜を見る会に息子はよく行きます。いとこや孫も連れて行った」と率直に話してくれた。母親は息子に携帯電話をかけてくれる。だが電話口に出た息子は記者に、「お前らに話すことなんて何もない。帰れ」。母親は、申し訳なさそうに玄関を閉めたという。

 ――ああ、同じだ、と思う。朝日新聞の記者だった私も同じような経験をしてきた。正直に話してくれた長門市の母親が、その後、息子と気まずくなったであろうことを思うと、私まで胸が痛む。できるだけ人を傷つけないよう注意しつつ、それでも必要な証言であれば、書かざるをえない。痛みも伴う取材という行為には、機関紙も一般メディアも違いはないことがよくわかる。    
 もちろん一般メディアと機関紙は、前者が「独立し、あらゆる権力の監視」を標榜する点で異なる。だが、一般メディアと、時の野党の機関紙とは、権力監視の点で同じ立ち位置にある。

 今年10月1日、しんぶん赤旗は「日本学術会議の推薦候補を菅首相が任命せず」とスクープした。その初報では、任命されなかったのは「数人」と人数は特定できていなかった。
 すぐに追いかけた朝日新聞が1日夕刊で「学術会議会員 推薦6候補外れる」と人数を特定。赤旗や朝日、毎日など各紙が連日取り上げ、大きな問題になった。結果的にだが、野党の機関紙と、権力と距離を保つメディアが、共闘する形になった。 
 一般メディアの権力監視機能が弱っていると言われる今、機関紙のジャーナリズムとしての活躍は、よい刺激だ。両者の切磋琢磨に期待しつつ、「さらに頑張れ機関紙」とエールを送りたい。
posted by JCJ at 10:25 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする