2021年01月01日

2020年日本と世界のスポーツ回顧2=大野晃

[日本スポーツの特徴]
1、20年東京五輪・パラリンピックの1年延期で膨れる経費など難問続出

 ◎開催延期で、施設の確保などに、ホストタウンを含め、各地で問題が噴出し、延期しても同じコースで行われる予定の聖火リレーにも影響が出ている。
◎東京五輪・パラリンピックの追加経費は、2940億円に上り、東京都が1200億円、国が710億円、大会組織委員会が1030億円を負担することになった。会場施設の追加利用料や人件費など延期経費が1980億円、新型コロナウイルス感染症対策費が960億円で、大会経費の総額は延期前の1兆3500億円から1兆6440億円に増えた。コロナ対策費は都と国で原則2分の1ずつとした。
大会時の感染症対策センターと検査体制整備は国が全額持つ。
組織委は予備費として計上していた270億円を投入し、保険の収入500億円を充て、残りはスポンサーの追加拠出などを見込む。
国が負担するホストタウンへの補助など400億円は直接運営に関わる大会経費から外し、暑さ対策や道路整備などと同じく関連経費扱いとした。大会関連経費を含めれば、3兆円を超えると試算される。
◎代表や代表候補の競技者たちは、国立トレーニングセンターが一時使用できなくなって、練習場を制限され、自宅でのトレーニングなど工夫し、ファンとの通信を通じて、懸命な努力を続けた。

2、バスケットボールも公営ギャンブルに
◎批判の多いサッカーくじの対象にバスケットボールのBリーグを加え、単一試合くじを盛り込んだ法改訂が決まった。
コロナ禍でプロ競技の経営難の中で、公営ギャンブル化が強まった。

3、大坂なおみが人種差別抗議の意志を示しながら全米オープン2回目の優勝
◎テニスの全米オープン女子シングルスで大坂なおみ(22歳)が2年ぶり2回目の優勝を果たした。4大大会での勝利は2019年全豪オープン以来で通算3勝目。
◎大坂は、1回戦から試合の入場時などに、差別を受けた黒人被害者の名前を入れた黒色のマスクを着け、人種差別撤廃へのメッセージを発信し続けた。黒人差別への抗議行動「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大事だ)」への支持を呼び掛け、「私はアスリートである前に黒人女性」と、競技者の社会的使命の重要性を体現した。

4、プロ野球は観客制限で大幅な観客減
◎プロ野球は、約3カ月遅れの6月19日に無観客で開幕し、その後、5000人から、球場定員の50%までの観客制限で、約140日間で120試合をこなした。
セ・リーグは、巨人が2年連続38回目の優勝を飾ったが、総観客数は275万4626人で、前年より約8割の大幅減となった。
◎パ・リーグは、ソフトバンクが3年ぶり19回目の優勝を果たした。
優勝を競り合ったロッテは、終盤に感染者が出て戦力ダウンしたことが響いた。総観客数は206万8952人で、過去最多だった昨季の1166万9891人から激減した。
◎日本シリーズは、ソフトバンクが巨人に初戦から無傷の4連勝で、4年連続11回目の優勝を飾った。
◎労組日本プロ野球選手会は2020年度の年俸調査結果(出来高分を除く)で12球団の支配下登録選手727人の平均年俸が4189万円となったと発表した。前年度比204万円増で1980年の調査開始以来の最高額となり、初めて4000万円台に到達した。しかし、観客減などで、全体のダウンは避けられなくなった。(→続きを読む)

  5、Jリーグなどプロ競技も苦境
◎サッカーJリーグJ1は、試合数を減らし、観客制限で、川崎が2年ぶり3度目のリーグ優勝を決めた。
4試合を残しての優勝決定は、J1が18チームによる年間34試合制となった05年以降、最速記録だった。
◎しかし、Jリーグは、8月に、各クラブの20年度決算について、全56クラブのうち約8割が赤字となり、約4割が債務超過に陥る可能性があると発表した。スポンサー収入と入場料収入が大幅減となるため。
◎バスケットボール男子のBリーグは19年―20年シーズンのB1、B2全36クラブの決算を発表し、赤字は全体の約6割にあたる22クラブで、約3割の11クラブが債務超過に陥った。実質は8割のクラブが赤字とされ、20年―21年シーズンも4割が赤字、3割が債務超過になる見通しという。
◎大阪市で開催予定だった世界ボクシング協会(WBA)ライトフライ級タイトルマッチが、王者の京口紘人と、京口の50代の男性チーフセコンドが感染したため中止された。感染拡大後、海外選手を招き、観客を動員して実施される国内初の男子の世界タイトルマッチとなる予定だった。

6、横綱不在、休場続出の大相撲
◎大相撲初場所は西前頭17枚目の徳勝龍が14勝1敗で初優勝した。
幕内最下位の「幕尻」の優勝は、2000年春場所の貴闘力以来で、20年ぶりのこと。白鵬と鶴竜の両横綱は序盤に休場し、角番の豪栄道は負け越して、大関からの陥落が決まった。貴景勝、栃ノ心、高安、そして豪栄道と4場所連続で大関が陥落するのは異例の事態。
◎大相撲春場所は、白鵬が鶴竜との横綱対決を制し、13勝2敗で2場所ぶり44回目の優勝。自身が持つ最多優勝記録を更新した。関脇・朝乃山が11勝を挙げ、場所後の大関昇進を確実とした。
◎夏場所が中止になり、観客制限の大相撲7月場所で白鵬と鶴竜の両横綱が休場し、大関転落後に序二段から復活した平幕の照ノ富士が30場所ぶり2回目の優勝を飾った。
◎秋場所は、白鵬と鶴竜の両横綱が休場し、初日からの休場力士が近年最多の67人に及び、関脇・正代が13勝2敗で初優勝して大関昇進を決めた。コロナ禍で所属部屋内での稽古不足によるケガ人続出だった。
◎11月場所は白鵬、鶴竜の両横綱が3場所連続休場で、大関・朝乃山
も3日目から休場。全横綱が2場所続けて初日から不在となるのは史上初めてで、一人大関の貴景勝が、小結だった2018年九州場所以来、2年ぶり2回目の優勝を果たした。
◎三段目力士の勝武士(28歳)=高田川部屋=が新型コロナウイルス性肺炎による多機能不全で亡くなった。

7、大学の競技会中断と甲子園の高校野球大会中止
 ◎大学では東京6大学野球など伝統のある競技会の中止、延期、中断が相次ぎ、再開されても、寮生活での集団感染などで活動停止に追い込まれる体育会の部活動が多発した。
◎第92回選抜高校野球大会が中止となり、出場予定の32校が交流試合を行った。
◎第102回全国高校野球選手権大会が中止された。大会の中止は米騒動があった1918年の第4回大会、戦局が拡大した1941年の第27回大会以来、79年ぶり3回目で、戦後では初めて。代表校を決める地方大会も中止された。

▽スポーツ・メディアの問題点

1、東京五輪・パラリンピックの延期に関し、開催の意義を再検討す る姿勢を欠いた。
2、東京五輪・パラリンピック延期の経費増による国民負担の分析批判が不足。
3、感染拡大防止策を徹底する異様な東京五輪・パラリンピック延期開催の問題追及が不足。
4、東京五輪・パラリンピックの延期開催を前提に、五輪代表などの紹介、応援に終始した。
5、感染拡大防止策による取材制限で、競技の内容分析を欠いた。
6、プロ競技で活躍した競技者の賛美に終始した。
7、競技会の中止が相次ぎ、無念の競技者紹介が増加したが、競技者の社会的使命を問わなかった。
8、公営ギャンブルに傾斜して、スポーツの人間的価値を見忘れた。
9、外出自粛などの取材制限で、草の根スポーツへの関心を失った。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
posted by JCJ at 01:00 | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする