
2022年、沖縄は本土に復帰して50年を迎える。玉城デニー沖縄県知事(写真上)は11月22日に開いたJCJ主催の対話イベントで、50周年を機に、在日米軍専用施設の70・3%を抱える現状を変え、その割合を50%にまで減らす案を、新たな振興計画に盛り込む意向を明らかにした。
米国のバイデン新政権について玉城知事は、大統領に直接会うため「正直に扉をノックさせていただく」と述べた。女性初の副大統領となるカマラ・ハリス氏にも会い、アジア全体の「女性サミット」を沖縄で開催するため、呼びかけなどの協力を依頼する考えも示した。
辺野古新基地建設については、軟弱地盤の問題から技術、環境の両面か「辺野古は無理」と指摘。日米政府に沖縄県も加えた協議の場をつくり「対話による解決を」と訴えた。
対話イベントはオンラインで開催し、毎日新聞専門記者の大治朋子氏、BS―TBS「報道1930」コメンテーターの堤伸輔氏、フリー編集者の鈴木耕氏が玉城知事と語り合った。
玉城知事との対話の主な内容は次の通り。
大治朋子 菅義偉首相の印象はどうか。
玉城知事 会社の上司的な雰囲気だ。あまり枕詞を重ねずに、単刀直入に話し、ものごとを進めていく感じだ。
大治 辺野古の埋め立て工事でマヨネーズ状の軟弱地盤が出てきた。
知事 この軟弱地盤の改良工事を日本はかつてやったことがない。やる機械も持っていない。70bまでの機械は持っているが、深さは90bまで達すると専門家は指摘している。しかも大浦湾に7万7千本余りの砂杭を打ち込む。とてつもない負荷を与える。それを世界がどう見るか、日本の環境問題に対する姿勢が問われる。
長い滑走路は不要
堤伸輔 バイデン氏が新大統領になる。
知事 来年、米国に行って、本当にお会いできるか、正直に扉をノックさせていただく。できればカマラさん(次期副大統領)とも会い、ぜひカマラさんが主体となったアジア全体の女性サミットを沖縄で開催していただきたいとお願いする。その時は世界の女性首相・大臣にも、できればカマラさんから声をかけていただく。
堤 いまニュージーランドはアーダーンさんという女性首相だし、豪州は女性の国防大臣。面白いアイデアだ。
知事 時代の転換期にはやはり女性が集まって、自由、平和、平等、人権、子どもというテーマをしっかりと話し合うことが、重要なメッセージになると期待している。
堤 普天間飛行場(宜野湾市)の負担軽減をどう進めるか。
知事 普天間に残された機能は地上部隊と訓練をともにするヘリコプターの部隊だけだ。(だから辺野古に)重厚な基地を作る必要はない。すでに海兵隊は遠征前方基地作戦(EABO)という新作戦をつくって、大規模で恒久的な基地は軍事的に脆弱であることから、部隊の分散を目指しているという。もう、固定翼機が使うような長い滑走路は必要ない。菅首相にどこかの場面で転換を図ってもらいたい。
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医療と農業視野に
鈴木耕 基地の島のイメージを一新するため、沖縄を医療の島にしたらいいと私は構想している。
玉城知事 身も心も健康になるウエルネスツーリズムなどの観光形態も考えている。医療と観光と農業の結びつきを深掘りし、21世紀ビジョンに盛り込んでいきたい。
大治 それは爆弾や戦争ではない、ソフトパワーの提示だと思う。ソフトパワーを提唱した米国のジョセフ・ナイさんは、沖縄という小さな島に、基地という卵を盛り過ぎていると言った。沖縄の過重な負担を疑問視している人に訴えかけていく強力なツールになるのではないか。
堤 知事を支える「オール沖縄」から、リーダー格の呉屋(守将)さんが離脱の意志表示をしたが。
知事 私の後援会長を務めていた呉屋会長がコロナの影響も含めたご自身のグループ企業の事情もあり、しばらく経済で少し頑張りたいと辞任された。しかし、これからも知事を支えていく考えに変わりはない、そこは信じてほしいとおっしゃっていた。
ミサイル配備反対
鈴木 米軍を本土の自衛隊基地に引き取る案をどう思うか。
知事 日米地位協定の壁があるため、たとえば普天間基地で消火剤があふれ出た時に、基地に入り、原因を調査させてくれと言っても「ノー」だ。
自衛隊の中に米軍基地を置いて、その自衛隊と共同使用する米軍基地では、日本の法律に従うとなれば、私たち沖縄からするとありがたい話だ。
大治 中距離攻撃ミサイルを中国に向けて米国は開発中だ。日本をはじめ東アジアの国々への配備を検討し、沖縄も含まれているようだが。
知事 実は十分な情報がない。宮古、石垣にもし米軍がミサイルを配備することがあれば、我々は断固反対すると話をしたところ、いや、防衛局はそのような情報は聞いていないという。でも、私たちはそれをうのみにしてはいない。政治としてしっかりと民意を問わなければならないと思う。
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年12月25日号