2021年01月07日

【事件】 桜疑惑1 議員辞職に値する虚偽発言 安倍の言い逃れは国民を愚弄=徳山喜雄

 首相在任中の国会での「虚偽発言」を不問にしていいのか。曖昧なままにすれば、三権分立など民主主義の基盤そのものが崩れていく。
 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に主催した夕食会(前夜祭)で、会場となったホテルへの支払いを安倍氏側が補填していたことが明らかになった。安倍氏周辺が東京地検特捜部の事情聴取で認めている。
 昨秋に問題が発覚して以降、安倍氏は国会で「参加者の会費(5000円)だけで費用をまかない、安倍事務所が補填した事実はまったくない」との答弁を繰り返し、うやむやになりつつあった。しかし、読売新聞11月23日朝刊の特報で、季節はずれの「桜」が咲くこととなった。
 夕食会は2013年から計7回開かれ、時効にかからない15年以降の5回で安倍氏側が負担した額は、計916万円にのぼるとされる。これは開催総額の約4割にあたる。前夜祭の主催は公設第一秘書が代表を務める「安倍晋三後援会」だったが、ホテル側が発行した916万円の領収書の宛名は安倍氏が代表の「晋和会」であった。
 これらは、政治資金規正法(不記載)や公職選挙法(寄付行為の禁止)違反にあたる可能性があり、地検特捜部は安倍前首相の公設第一秘書の立件方針を固め、年内にも安倍氏本人から事情聴取することを要請した。安倍氏周辺によると、秘書が安倍氏に虚偽の報告をしたため、誤った答弁を国会で繰り返すことになったという。しかし、このようなその場逃れともいえる言い訳をだれが信じるのだろう。
 不記載の罰則は「3年以下の禁錮または50万円以下の罰金」。検察が立件すれば略式裁判になり、秘書が罰金を納めることで幕引きとなるともいわれる。だが、国会で国民を欺きつづけた安倍前首相の責任を、トカゲのしっぽ切りで終わらすことに国民は納得するだろうか。
 振りかえれば、森友学園への国有地売却をめぐる問題では、安倍首相(当時)は2017年2月の衆院予算委員会で「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と大見得を切った。その約1年後の18年3月、財務省の公文書改竄が発覚し、安倍氏の妻・昭恵氏に関わる記述が削除されていることが判明した。
 加計学園の獣医学部新設をめぐる問題では、加計孝太郎理事長との関係を尋ねられた安倍氏は「獣医学部の新設について、加計さんから相談や依頼はいっさいない。知ったのは2017年1月20日」などと答弁していた。しかし愛媛県の文書には、15年2月に加計氏が安倍氏と面談、「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と安倍氏が話したと記録されていた。この件については、加計学園の事務局長が愛媛県に虚偽の報告をしたと説明した。
 返答に窮すると、秘書の責任にしたり事務局長の責任にしたりと、やり口が酷似している。国民を愚弄しているともいえる安倍氏による一連の虚偽発言の責任は、議員辞職に値する。
徳山喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年12月25日号

posted by JCJ at 02:00 | 事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする