2021年01月11日

【‘20読書回顧】 凄まじい情報戦とフエイクとの闘い=香山リカ(精神科医)

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2020年は世界を新型感染症が襲い、当初は「世界 はひとつになって立ち向かうだろう」などと希望的な観測もあったが、そうはならなかった。それどころか日本国内を見ても、未だにこのウイルスの威力だけでなく存在すら否定する識者がいる。
 アメリカでは大統領選挙が行われたが、トランプ大統領自身が敗北を認めず、民主党の不正選挙を訴えるなど、そこでも混乱が深まっている。
 ネットが普及し情報が手に入れやすくなっているのに、逆に誰もがフェイクニュースに惑わされ何を信じていいのかわからなくなっているのだ。

 しかしこの状況は今にして始まったわけではない。私にとっての今年の一冊は、キエフ出身のジャーナリスト、ピーター・ポメランツェフ『嘘と拡散の世紀』(築地誠子ら訳、原書房)によると、ネットでのデマや作り話を駆使した情報戦は、すでに20年も前から画策されており、そこから生まれたのがプーチンでありトランプであるという。
 著者はもはや、「なぜ事実は無意味になってしまったのか?と問うのではなく、そもそもなぜ事実に意味があったのか?と問うべき」段階に来ているという。「(事実の)重みを放り投げて、辛気臭い現実にざまあみろと言ってやることには、ある種の子供じみたよろこび」があり、プーチンやトランプこそ「現実が突きつける束縛からの解放」のよろこびを与えてくれる存在、と言うのである。
 もちろん、著者はそれをよしとしているわけではないが、本書で著者が世界の現場で取材した情報戦のすさまじさを知ると、コロナも民主主義も最も重要なのはフェイクニュースとの闘いだということがわかる。

 今年、もう一冊、感銘を受けたのは、元ミュージシャンの作家ゲイリー・ラックマン『トランプ時代の魔術とオカルトパワー』(安田隆監訳、ヒカルランド)だ。タイトルからして怪しい本のように思われそうだが、信仰がベースになったポジティブシンキングや保守思想がトランプ大統領を生んだ経緯がよくわかる。こちらも必読だ。
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posted by JCJ at 02:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする