2021年01月14日

【‘20読書回顧】 今こそ「公助」で人の命を守るとき! =吉田千亜(`20JCJ賞受賞者)

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政治家の会見で飛び出る言葉や造語は戦時中のスローガンのようだ。裏づける思想や哲学のない言葉の薄っぺらさは、市井の人の命や尊厳を軽んじることに起因する。コロナ禍だけではなく、原発事故後も感じたことだ。精神論と個人の努力のみで命は守れない。
 松沢裕作『生きづらい明治社会―不安と競争の時代』(岩波ジュニア新書)は、そんな時に出会い読んだ。とても読みやすいが重要な点を指摘している。明治社会というよりも、「自助・共助・ 公助」と言いながら、徹 底的に「公助」に欠ける現代を詳らかにしている。
 原発事故でも、コロナでも、真っ先にその影響を受け、命を脅かされ生活困窮に陥ったのは、弱い立場にいた人々だ。しかし、生活困窮は本人の努力が足りないせいで、「自己責任」にしてしまう風潮がはびこる。そしてまっとうな公助もないなか、民間支援団体が奔走し、疲弊している。

 本書で書かれている「通俗道徳」は、「頑張れば必ず成功する」という信念だ。悪い考えと思う人は少ないのかもしれない。しかし、それは貧困 に陥った弱い立場の人々に、冷たい視線を投げるのを正当化する「ワナ」 でもある。そして、それ は現代に受け継がれてしまっている。
 権利としての「生活保護」を受ける人々を非難し、「大変なのはお前だ けじゃない」と思うこと。そして、自らも「生活保護」は受けたら恥ずかしいと捉えること。これは原発事故の賠償の際にも見られた現象だ。
 努力で困難を乗り越えろというのは、人を殺すのだと言い続けたい。原発事故でもコロナ禍でも、その理屈を政治が一部の人に率先して押しつけている。

 どんな人にも生きる権利がある。頑張る・頑張らないに関わらず、公助が必要な場面があり、公助で守られるべき命がある。「通俗道徳」を消し去るには、思想と哲学に裏付けられた温かい言葉の力しかないと、改めて感じている。
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posted by JCJ at 02:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする