
11月1日、住民投票で「都構想」は否決され、松井大阪市長は任期後の政界引退を表明した。だがそのわずか4日後に、「府・市の広域行政を一元化する条例案」と「8総合区設置案」と、都構想の裏ワザをぶち上げた。府側の吉村知事も11月20日府議会で同様の「条例案を検討する」と答弁した。条例なら住民投票は要らず議決で済むが、問題は市議会で「維新」単独では過半数の議席を持たないことにある。
住民投票結果が僅差であったことが彼ら維新を「強気」にさせているのだろうが、前回2015年の投票では反対だった公明党を「脅し」、同党票の半数を賛成に転換させたにもかかわらず票差は僅かではあるが広がった。 ここで公明党票を全部取り込めなければ「都」は絶望的になるだろう。だから再び「脅し」をかけた。
「総合区に反対すれば公明党と戦う」として、公明党が現職を持つ衆院小選挙区に対立候補を立てるとの腹を明かした(12/3会見)。市会で公明党の賛成を確保して条例を議決、住民投票結果を骨抜きにしようとする腹だ。「大阪都」は結党以来の看板政策で、大阪維新のレーゾン・デートルである。彼らは決して諦めてはいないのだ。
都構想への賛否で大きな内部対立があった自民党大阪府連は、都構想の根拠である「大都市法」の効力を停止させる「都構想停止法」案を国会に提出する方向で検討に入り、「社会常識が通じないなら、法で規制するしかない」(左藤政調会長)としている。
他にも「IR」「万国博」等大阪人の意識をくすぐる維新の政策にも暗雲が出ている。カジノを核とする「IR」への応募事業者は1社のみで、それも採算性から及び腰で、実現に疑問が出ている。
「万国博」は会場工事費が当初の1、5倍に膨れ上がることが明らかになった。また昨年維新公認で当選した府下池田市の冨田市長は、市長室にベッドやサウナを持ち込み顰蹙を買い、市議会は百条委員会を設置して市長の責任追及を開始するなど、維新への逆風も吹き始めている。
井上喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年12月25日号