2021年01月29日

醜態さらした安部前首相 「記事捏造が確定」とFBに投稿 デマ発信し謝罪せず=山田寿彦

 安倍晋三前首相が醜態をさらした。元朝日新聞記者、植村隆氏が櫻井よしこ氏らを名誉棄損で訴えた裁判(植村裁判)で原告敗訴とした最高裁決定を一知曲解し、「朝日新聞と植村記者の捏造が確定した」と事実無根の投稿を自身のFBで拡散。抗議を受けると一転、削除に追い込まれた。謝罪の言葉は確認されていない。
 安倍氏の投稿は11月20日午前10時8分付。「元朝日新聞記者の敗訴確定 最高裁 慰安婦記事巡り」の見出しが付いた産経新聞電子版の記事を引用し、「植村記者と朝日新聞の捏造が事実として確定したという事ですね」とコメントした。
 安倍氏のフォロワーは約60万5000人おり、賛否の反応が相次いだ。「はい、最高裁判所までもが植村氏と朝日新聞の捏造を事実だと認定しました」と支持する声の一方で、「デマを飛ばすのはやめましょう。最高裁判決(実際は札幌地裁、同高裁判決)は『植村氏の記事が事実と異なると櫻井氏が信じる相当の理由があった』としているのであって、『捏造が事実として確定』などしていません」と的確に反論する投稿が交錯し、炎上状態となった。
 反論した投稿子が指摘した通り、確定判決が植村氏の記事を「捏造」と認定した事実はない。櫻井氏らの言説は植村氏の名誉を棄損し、社会的評価を低下させた事実を認定。ただし、「植村氏があえて事実と異なる記事を執筆したと信じたのには相当の理由がある」との理由により、法的な賠償責任を免じたに過ぎない。櫻井氏ら被告側は、植村氏が記事を捏造した事実の裏付けとなる証拠を全く示せなかった、というのが裁判の実像だ。
 安倍氏の投稿を受けて植村弁護団の神原元、小野寺信勝の両弁護士は連名で安倍氏に対し、「本件投稿は名誉棄損として民法上不法行為と評価される」との抗議文を送付。投稿の削除を求めた。
これに呼応したのか、抗議文の送達後、投稿は削除されたが、一国の首相を務めた人物が事実確認を怠り、デマを発信した事実は消えない。
皮肉なことに、「桜を見る会」の前夜祭をめぐる安倍首相(当時)の国会答弁が事実と異なっていたことが東京地検特捜部の捜査で発覚した。今度は自身が「捏造総理」の批判に向き合うことになる。
 
植村裁判 旧日本軍慰安婦として戦時性暴力を受けた朝鮮人女性の生存を伝えた1991年の朝日新聞記事をめぐり、ジャーナリストの櫻井よしこ氏らが「記事は捏造」と批判。執筆した元朝日新聞記者の植村隆氏は、自身に「捏造記者」の汚名を着せた櫻井氏や学者、出版社を相手に名誉棄損による損害賠償を求め、札幌と東京で提訴した。札幌訴訟は11月18日、最高裁で原告敗訴が確定した。
  山田寿彦
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年12月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 裁判 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする