2021年02月26日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】永久凍結のトランプTWと言論の自由 メルケルの真意は?

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 トランプが表舞台から去った。議会占拠事件でツイッターが凍結されたことは、さもありなんと思う。その一方弾劾裁判に問われていたトランプ氏に対し、米上院は2月13日無罪を表決した。
直後トランプ氏は次のような声明を発表した。
 米国を再び偉大にする素晴らしく歴史的、愛国的運動が始まった。今後数ヵ月内に私は多くのことをあなた方にお伝えする。そして米国の偉大さを達成する旅を皆さんの共に続けることを楽しみにしている」。
 トランプの今後の動きは、アメリカ社会にとって無視できないことも現実だ。
 共和党で弾劾賛成の票を投じたのはわずか7人の共和党議員に留まり、出席議員の2/3にはるかに及ばなかった(有罪支持57票、無罪支持43票)。

完全禁止の意見が
 トランプツイッターの凍結は、トランプ支持派による1月6日の議事堂(キャピトルヒル)占拠事件がきっかけだった。しかしトランプツイッター凍結の動きは早くからあった。
 ツイッター社は昨2020年5月26日、「カリフォルニアの郵便投票は不正の対象になる」とのトランプ投稿に対し、「事実確認が必要だ」との画面をかぶせ、一回クリックしない限り直接文面を見ることができなくなった。その2日後、5月25日のジョージ・フロイド事件でもツイッターはトランプの投稿に対しも、「暴力をたたえる内容は、ツイッターの倫理綱領に違反だ」、かぶせ画面で直接見られない措置をとった。
 その後選挙戦激化とともに、トランプツウィ―トのほとんどが「真偽が疑われる」、「誤解を招く」、「事実確認が必要だ」など、かぶせ画面の対象となった。しかし「大統領としての公職にあり、トランプ発言を社会が知ることも必要だ」としてクリックすれば発言を視聴できる措置をとっていた。トランプツイッターを完全に禁止せよとの意見はツイッター社に繰り返し寄せられていた
 1月6日、トランプの呼びかけに応じた支持者らが米議会に乱入、3時間にわたって占拠する、という事件がおきた。折から議会ではバイデン氏を大統領当選者とする議事が進行中だったが中断、当選確定は7日早朝となった。事実上のクーデターだと意見も根強い。
 米ツイッター社は、1月8日「暴力行為を扇動する恐れがある」としてトランプツイッターのアカウントを永久凍結したと発表した。一方、トランプ支持者の多くがツイッターの代替えとして使うSNSアプリ「パーラー」については、グーグル社が8日、アップル社が9日、凍結、削除した。ツイッター社は永久凍結の理由として、「1月17日も連邦議会や各州議会を襲撃する計画もツイッターなどで拡散されている」ことを明らかにしている。
 CNNが入手したFBI文書によると、大統領就任式以前にトランプ派、急進派(Qアノンなど)が全米50州の州議会を乗っ取り、首都ワシントンでは就任式の20に「武装デモ」の計画があったという。

報道官による発言
 ところでトランプツイッターの凍結に対し、一部に言論の自由の自由に反するのではないかとの意見が出ている。私はSNSの無制限、無規律な現状を改めためる一環としての「トランプツイッター凍結」が正当であることを主張したい。
 巷間誤って伝えられるのは、ドイツのメルケル首相(写真)が凍結に異を唱えたという点だ。しかしメケル本人の発言ではなく、報道官によって発言したものであったという。しかもメルケルはトランプの憎悪に満ちた発言、暴力をそそのかす発言を強く批判している。
 ドイツではSNS上でのヘイト発言を規制する場合、連邦刑事庁に該当する犯罪的コンテンツを報告することを義務付ける法改正を昨2020年6月に行った。
 アメリカでは私企業であるSNS各社が、各社ごとの倫理規定に従って「かぶせ」、「削除」、「アカウント禁止」の削除を行っている。
メルケル首相の発言はドイツSNSヘイト対策に公的機関の関与を取り入れている事実を説明したものであった。制度上、違いがあることを指摘したのがメルケル発言であり、国際的には何らかの公的関与が必要であることを訴えたものであった。(→続きを読む)

復権めざすトランプ
 SNSの全世界利用者は最近の調査で世界38億人を突破した(2020.11.19,インスタラボ調査)。
 トランプツイッターは虚偽の主張を繰り返したあげく、バイデン新大統領の承認中の米国議会の大衆を扇動し、議事堂占拠をもたらした一種のクーデター行為であった。
 SNSの影響は一国にとどまるものではない。国境を越えて世界に広まる、ヘイトや破壊をどう食い止めるのか、国際的な歯止めが必要となっている。
 トランプに触発された右翼的、破壊的グループはヨーロッパにも、アジアにも根を張っている。
 弾劾裁判で無罪を勝ち取ったトランプは、復権を目指す。1月25日フロリダ州パームビーチに事務所を開設した。米CBSの世論調査によると、「トランプが新党を作った場合参加するか」との問いに、共和党支持者の7割が賛意を表したといわれる。
 共和党の主流派は中間選挙でトランプの支持を当てにして擦り寄っている。トランプ自身は2年後どう動くのか明らかにはしていない。共和党内では亀裂が深まっていると伝えられる。
 バイデン新大統領は次々の前政権の誤った政策の急速な是正を図っている。米世論の分裂克服、コロナワクチンの投与拡大、国際社会への復帰と新な国際秩序構築、女性、黒人などの登用などが主な課題だ。
 一方で中国や最近のミャンマー軍部などがSNSを統制する強権政治が見られる。
 新たな国際秩序の一環として、SNSが市民の発言の自由を保障する一方、憎悪をあおる行為やテロ行為の手段にならない歯止めを加える方策を見出すことは急務ではないか。
隅井孝雄(ジャーナリスト)
posted by JCJ at 01:00 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする