2021年03月01日

五輪開催の是非問えぬメディア スポンサーゆえ腰砕け 使命忘れおざなり報道=後藤逸郎

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 新型コロナウイルス感染拡大が、東京オリンピック・パラリンピック大会と日本の報道機関の存在意義を揺るがせている。
 開催予定日まで半年を切っても世界で感染収束しないのに、国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会、政府が推進一点張りに対し、日本の世論は冷ややかな目を向けている。コロナ禍前は「世界一のスポーツ大会」と誰もが認めたオリンピックのブランド価値は今や地に落ちた。そして、国民の視線の先には、感染症流行中のオリンピック開催の是非を問えない報道機関がいる。

足元大きく揺らぐ
 組織委の森喜朗会長の女性蔑視発言と辞任を巡る報道は、オリンピックを相対化できない日本の報道機関の体たらくを浮き彫りにした。
 最終的に森会長は2月12日辞任したが、きっかけとなった日本オリンピック委員会(JOC)での3日の発言の初報は小さかった。翌日の朝日新聞と毎日新聞の社会面3〜4段相当はもとより、読売新聞は第三社会面ベタ記事だった。NHKは3日夜のニュースで女性蔑視発言に触れず、4日早朝に海外の報道を引用する形でようやく伝えた。
 日本の報道機関が批判のトーンを上げたのは、森会長が同日、発言撤回の会見を開いてからだ。ただ、報道の中心は、IOCやスポンサー、米三大ネットワークNBCの動きを伝える形で「批判の声が高まっている」とした。要はオリンピック開催を錦の御旗に、森会長発言を否定してみせた。オリンピックにかこつけなければ批判できない報道機関の足元は、大きく揺らいでいる。
 森会長の問題発言とはこれまでも繰り返されてきた。森会長は1月12日、「世論調査にはタイミングと条件がある」と述べ、共同通信が電話世論調査でオリンピックの延期・中止を望むとの回答が8割だったと報道したことに噛みついた。NHKは翌日、共同とほぼ同数値の世論調査結果を公表し、報道機関の面目を保ったかに見えた。

設問3択から4択
 ところが、森会長の問題発言後の2月8日、NHKと読売が公表した世論調査は異様なものだった。NHKは、オリンピックを「これまでと同様に行う」が8%、「観客の人数を制限して行う」が29%、「無観客で行う」が23%、「中止する」が38%との調査結果を発表した。1月と昨年10月の調査時は「開催」「延期」「中止」の三択の設問だったのを、2月は四択に変更したのだ。
 読売は8日付2面で「五輪『開催』36%、『中止』28%」と報道。設問は四択で、「予定通り開催」が8%、「観客を入れずに開催」が28%、「再び延期」が33%、「中止」が28%だった。昨年3月調査は三択で、「予定通り開催」が17%、「延期」が69%、「中止」が8%で、見出しは「延期が69%」だった。
 いずれの社も調査手法に連続性がなく、統計的な正確さに欠ける。読売の8日付報道は、最も回答が多かった「再延期」も、延期と中止を合わせて開催否定が5割も見出しに取らず、2種類の「開催」の回答を合算し、「中止」を上回る数字を印象づけるものだ。オリンピックが絡むと、報道姿勢が揺らぐのが日本の現状だ。

命運が尽きるかも
 読売、朝日、毎日、日経、産経、北海道新聞がオリンピックのスポンサーを務め、テレビ局が巨額の放映権料をIOCに支払っていることは、周知の事実だ。だが、「平和の祭典」として歓迎されたオリンピックはもはや、感染爆発リスクの高い集客イベントのひとつにすぎない。イベントへの資金提供と自社媒体報道という旧来のビジネスモデルは、コロナで終わった。
 コロナの世界的流行が収まらない中、世界から観客や選手を招いて、なお感染爆発は防ぐ方法をIOCも組織委も政府も示さない。これで開催にまい進するのは、感染爆発リスクと国民の生命・健康を天秤にかける所業だ。有効な対策がない以上、オリンピック中止こそ、これ以上のコロナ感染拡大を食い止める唯一の選択肢だ。
 支持率が低下した菅義偉首相は政権浮揚の手段としてオリンピック開催に縋る。オリンピックの政治利用を止め、国民の生命・健康を守ることは報道機関の使命だ。オリンピックビジネスを優先し続けるなら、日本の報道機関はコロナ収束前に命運が尽きるだろう。
後藤逸郎(ジャーナリスト)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年2月25日号

posted by JCJ at 02:45 | 東京五輪・パラリンピック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする