2021年03月16日

【追悼】一言一句に厳しく 筋通した 戸崎賢二氏を悼む=小滝一志

  放送メディアの論評を「週刊金曜日」「赤旗」などに数多く寄稿し、このJCJ機関紙にも何度か登場したことがある元NHKディレクター戸崎賢二氏が1月11日亡くなった。81歳だった。NHK中期経営計画を批判した「視聴者不在のNHK縮小計画」(週刊金曜日2020.10.30号)が最後の寄稿になった。
 戸崎氏は「放送を語る会」創立当時からのメンバーで、会の大黒柱・理論的支柱であり、無くてはならぬ中心メンバーだった。「放送を語る会」が発表する見解や申し入れ文書の作成も多くは戸崎氏が原案を作成した。
 「放送を語る会」の主な活動として「テレビ報道のモニター」がある。2003年イラク戦争報道に始まり2020年新型コロナ報道まで23回実施、その都度報告を公表しているが、その大半のまとめ作業を戸崎氏が担当した。一言一句おろそかにしなかった戸崎氏と各番組モニター担当者の間で、報告書の最終の推敲をめぐって毎回交わされるメール上での丁々発止の厳しいやりとりを、語る会メンバーはいつもハラハラしながら見守っていた。
 新聞・雑誌への寄稿でも、戸崎氏の厳密さは変わらなかったようで、最後の寄稿を掲載した週刊金曜日編集部の方が「最後はお互い了解しましたが、途中ではケンカしそうになりました」と苦笑していた。
 亡くなる直前、1月8日にあけび書房から「魂に蒔かれた種子は」が出版された。内容は、ディレクター時代の試行錯誤、NHK定年退職後教壇に立ち若い学生に向き合って感じたこと、家族のこと、幼少期の思い出など、普段のテレビメディアへの辛口の論評と違い人間味溢れた心温まるエッセイで、私たちに向けた戸崎氏の遺言とも読める1冊だ。NHKディレクターとして手掛けた番組「大岡昇平・時代への発言」(1984年終戦記念日特集)、「授業巡礼〜哲学者林竹二が残したもの〜」(1988年年「ETV8」)などの思い出が綴られている。
 告別式では、遠方で参列の叶わぬお姉さまからの弔辞をご子息が読まれた。「筋を通して生きたあなたは立派でした。生ある限り忘れません」「さようならは言いません。今までありがとう」。戸崎さんを知る人たちの共通の気持ちでもあろう。
  ご冥福を祈る。
 小滝一志
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年2月25日号
posted by JCJ at 02:00 | 追悼 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする