2021年03月19日

【月刊マスコミ評・出版】女性蔑視暴言とメディアの態度=荒屋敷 宏

 ジャーナリストとして女性蔑視にどう向き合うかが問われている。「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」との森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長の暴言は、女性を蔑視がはびこる日本社会の問題を改めて浮き彫りにした。
 朝日新聞編集委員の秋山訓子氏は、森氏の暴言について、「AERA」2月15日号で、自らの取材経験をもとに、男社会で傷をなめ合うような日本社会の問題として批判している。「私は政治の世界を20年以上取材してきた。かつては政治家も官僚も、取材するジャーナリストも完全な『男社会』。少しずつ空気は変わってきたが、今回、嫌な思い出がよみがえった」と書き、「わきまえない女」でいきましょうと呼びかけた。女性記者だけでなく、男性記者も声を上げるべき問題だ。

 「週刊朝日」2月19日号も「拝啓 森喜朗さま」と見出しを立てた記事を掲載した。批判を内外から浴びても辞任せず、逆ギレする森氏の「退場」の時期はとうに過ぎているのではないだろうかと批判している。東京五輪中止の論陣を張っていた「サンデー毎日」は、2月21日号までの間に森氏の暴言を真正面から取り上げた見出しと記事がない。どうしたのか。

 「週刊文春」2月18日号と「週刊新潮」同は、それぞれ森氏の周辺を洗っている。「週刊文春」は、問題発言を繰り返してきた森氏が自民党の最大派閥「清和会」出身で、総裁選で支援を受けた菅義偉首相も森氏退任を言えない、等々。「週刊新潮」は、森氏が暴言するに至ったのは日本オリンピック委員会(JOC)の山口香理事と日本ラグビーフットボール協会の谷口真由美理事の存在があったからだと、うんぬん。「週刊文春」と「週刊新潮」は、日本社会における「女性蔑視」ではなく、問題を森氏個人の範囲にとどめようとしている。
 女性の裸写真があふれる「週刊ポスト」2月19日号は、「放言王・森喜朗会長が天皇陛下に『五輪開会宣言』を再上奏!?宮内庁の困惑」との記事を掲載したが、暴言を真正面から取り上げてはいない。

 女性蔑視について欧米メディアの目が厳しいのは当然のことだ。世界中から選手たちだけでなくメディアも集まる東京五輪の責任者として森氏は、ふさわしい人物だったのか。「いかなる種類の差別」も認めない五輪憲章の趣旨にふさわしい人物だったのか。森氏だけでなく、日本のメディア、記者も問われている。 
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年2月25日号

posted by JCJ at 02:00 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする