2021年03月20日

【おすすめ本】秋山信一『菅義偉とメディア』─菅の<番記者>が赤裸々に暴く政治取材現場の実態=藤森 研(JCJ代表委員)

 「権力は快感」―菅義偉が口にした言葉を副題並みに扱うオビはどぎついが、内容は客観性を重 視した冷静な報告だ。菅の官房長官最後の一年を「番記者」として見てきた毎日新聞記者の著。
 政治取材の現場ルポの面白さが満杯だ。会見前 の当局による記者への「問取り」(もんとり)、曖昧な回答に記者が質問を重ねる「更問い」(さらとい)、会議室の「壁耳」、長官番のみが許される「ぶら下がり」。こうした“番記者文化”は 癒着に映るものの、著者 は「『オフレコ懇談』だから本音が何でも聞けるというような甘い世界ではない」とも書く。
 もちろん、「少しでも菅と関係を築きたい」と、更問いを控える記者が多いことも遠慮なく書く。 政治家と継続的な関係をつくらなければならない政治部記者が、批判的な姿勢を失っていく危険性を強く警告するのは、著者の“本籍”が外信部で政治部記者を観察する立場に立てたからだろう。

 さて菅とはどんな人物か。著者が挙げる第一の 特徴は「説明能力不足」だ。本心を明かさない面もあるが「そもそも性格がシャイだ」と著者は見ている。メディアとの関係では、安倍前首相とは違って、懇意なメディアを 優遇したり批判的な記者に怒って当たったりするようなことはないという。
 では首相にふさわしいか?「そうは思わない」というのが著者の結論。 リーダー性や語りかける力、未来社会を描く力はいずれも「感じなかった」という。菅は「権力は快感」という言葉を漏らした。著者は「重圧の中で政策を進める快感」だと解釈したが、その当否は、読んでみた上でのそれぞれの判断であろう。(毎日新聞出版1200円)
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posted by JCJ at 02:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする