◆沖縄県石垣市・尖閣諸島の周辺が緊迫している。中国は海警局の船舶に、武器使用を認める「海警法」を施行して2カ月、海上警備と称して尖閣諸島周辺の領海侵入をやめない。23日には中国海警局の船4隻が、1隻は機関砲のようなものを搭載して、相次いで領海侵入した。すでに今年に入って10回目となる。
4年半前には中国公船が20隻以上、さらに400隻以上の中国漁船が共に押し寄せ、尖閣諸島の周辺を航行し、威嚇行動を繰り返した。漁船には退役軍人や漁民らで組織している「海上民兵」が100人ほど乗り込んでいたという。
◆国連海洋法条約など、沿岸各国に認められた権限を侵犯しているにも関わらず、中国国防省は「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国固有の領土だ。海警局の活動は正当で合法だ」と述べ、領海侵入を正当化している。
◆一方、日本政府は領海に侵入した船舶に対し、海上保安庁の巡視船が行う「危害射撃」を認めるとの見解を発表している。船舶に銃口を向けず引き金を引く「警告射撃」と、乗員に危害が生じないよう注意しながら船体を狙う「船体射撃」に加え、相手に死傷者が出ることも想定して銃撃する「危害射撃」も可能とする。
◆「危害射撃」の要件は、あくまで正当防衛であり、相手が撃ってこなくても、領海侵犯だけで武器使用の要件を満たすのか。また不用意な「危害射撃」が、外国政府の船への「先制攻撃」と受け取られ、国際問題に発展しかねない。
◆さらに、ここにきて日本政府は、日米間の安全保障協議委員会(2プラス2)で合意した、尖閣諸島周辺の安全確保に向けた実践的な日米共同訓練の具体化を急いでいる。
尖閣有事を想定した訓練には、米側は海兵隊と陸海空軍が参加するとはいえ、最前線に出て主体的に対処するのは自衛隊。米軍は側面から支援・補完する枠組みになる。その場合の実地訓練はどこでやるのか。
◆尖閣諸島のうち北東にある久場島と大正島は、日米地位協定に基づき、米軍が管理する演習場として提供されている。米軍が了承すれば、自衛隊との共同訓練に使うことが可能になる。
沖縄では相次ぐ米軍機の低空飛行訓練も、尖閣情勢を念頭に中国の動きをにらんだ訓練、そして日米共同作戦への地ならしとみて、警戒を強めている。
◆この秋には陸上自衛隊が隊員14万人を総動員して、尖閣諸島周辺などでの有事を想定した、28年ぶりの大演習を検討している。沖縄に駐屯する第15旅団も参加する予定だという(「沖縄タイムス」3/23付)。いや増す緊迫に目が離せない。(2021/3/28)