2021年04月08日

【好書耕読】「うちなーぐち」に耳を傾けて=石川 旺(JCJ賞選考委員)

 「島口説」(しまくどぅち)は、東京の池袋にあるパモス青芸館の開館にあたって、企画された北島角子主演の一人芝居。1981年に文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞した。
 舞台は沖縄市の繁華街にある民謡酒場。そこの女主人の語りと歌と踊りで構成されてゆく。第一部では戦争から戦後にかけて一人の女性が直面した激動。第二部では基地に重くのしかかられた戦後沖縄の抵抗と闘いの歴史が描かれている。
 劇中では沖縄の古謡、民謡など多数が歌われ、また語りにも沖縄言葉(うちなーぐち)が豊富に取り入れられている。ささやかな個人の幸せが大きなうねりの中で翻弄される過程。続いて訪れた巨大で理不尽な力に対する人々の抵抗などが、柔らかな語り口や歌の中から次第に鮮明さを増して浮かび上がってくる。

 『謝名元慶福戯曲集 島口説』(ゆい出版)には代表作「島口説」をはじめ「美ら島」、「命口説」など六本の戯曲を収載。著者は「島口説」を二晩で書き上げたという。沖縄で生まれ育った著者の情念が噴出し、突き動かされた時間であったに違いない。
 セリフを書くとき、声を出す癖がある著者は「島口説」執筆中に自分の声が北島さんの声になり驚いたと述べている。また彼は劇作家としてだけでなく、映像作家としても優れた報道活動をしている。
 2018年3月、土木技術者の北上田毅氏が沖縄防衛局による大浦湾のボーリング調査の結果を情報公開で入手。湾内に豆腐のような軟弱地盤があることを発見した。

 謝名元氏は6月にドキュメンタリー・シリーズ「美ら海辺野古」で北上田氏を取材し、軟弱地盤の存在を広く訴えた。しかし中央の大手メディアは動かず、9月の県知事選挙に傾注し、12月には土砂投入による不可逆的な環境破壊が開始されてしまった。大手メディアは翌19年になって、ようやく軟弱地盤を報じ始めたのだ。
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posted by JCJ at 02:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする