2021年04月18日

【今週の風考計】4.18─トリチウム汚染水に潜む深刻な未解決問題

ついに政府は、「3・11フクシマ」原発の汚染水を、海に放出する方針へと舵を切った。いま福島原発には処理水タンクが約1000基(容量137万トン)、すでに貯蔵量は125万トン、9割を超え1年後の秋には満水になる。これ以上タンクの増設は敷地の確保も含め、限界だとして海洋放出するという。
トリチウムは体内に取り込んでも排出しやすく健康被害は起こりにくい、海外でも原発から出る「トリチウム水」は海へ放出され、問題ないと、政府は主張している。

だが福島原発の汚染水は、トリチウム以外の放射性核種が見つかった経過がある上に、通常運転の原発から排出される処理水とは性質が異なる。
 通常の原発から海に放出される「トリチウム水」は、無機トリチウムのため、魚は摂取しても、どんどん排出するため、生体内半減期は12日と短い。
 福島原発の「トリチウム水」は、はじめは無機トリチウムでも、時間の経過とともに、タンク内の微生物に取り込まれて有機結合型トリチウムに変化している。これが海に放流されると、魚が栄養源として摂取し体内に蓄積される。
この有機結合型トリチウムの濃度は、海洋にある有機物の百万倍にもなる。生体内での半減期は40日から1年に及ぶ。国内や海外の原発から放出される「トリチウム水」とは、全く違うのだ。

福島原発の処理水に含まれるトリチウムは、総量が約860兆ベクレル。それを年間の放出水準22兆ベクレル以下、すなわち処理水1リットル当たり1500ベクレルまで薄める再処理をして海に流す。
 タンク1基分1370トンを再処理・希釈するには、なんと500倍の68万トン、原発敷地を埋めるタンクの半分500基分の海水が必要となる。そして1年間に3万1000トンの処理水を、40年かけて海に流すのだ。
海水で薄めて海へ流す? いくら薄めたってトリチウム全体の放出量は変わらない。海にはそれ以上の排出先がない以上、海や魚に累積され海の生態系を汚す。

その間、福島原発から1日140トンの汚染水が発生する。タンクに貯蔵するしかない。40年たっても住めない土地だってある。そこの地権者と話し合って、タンク設置用の土地を取得することも可能だが、検討すらしない。
さらには40年もあれば、半減期12年のトリチウムは、大幅に減衰する。トリチウム除去の開発も進むだろう。なぜ海への放出を急ぐのか。
 しかも肝心の汚染水の発生をゼロにする道のりが見えてこない。汚染水の発生元である原子炉内デブリは、なんと880トン。人も近づけない高レベルの放射線量が壁となり、取り出す見通しすら立たない。

漫画家・やくみつるの風刺絵(朝日・4/17付け)ではないが、過去のいざこざをなかったこととして和解することを、<「海」に流す>と書いた子供が、「ちがうの? ニュースで言ってたのに」と、ぶつぶつ母親に言うのを笑えない。本当に原発汚染水の処理を、「水」に流してはいけないのだ。(2021/4/18)
posted by JCJ at 07:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする