2021年04月20日

【オンライン講演会】 ヤジと民主主義 排除→暴走の恐怖 無視されたマスコミ=須貝道雄

  ドキュメンタリー番組「ヤジと民主主義」を企画した北海道放送(HBC)の報道部編集長、山崎裕侍さんを講師に2月13日、JCJはオンライン講演会を開いた。

 番組の舞台は2019年7月の札幌。参院選挙で街頭演説をする安倍晋三首相(当時)に、「安倍やめろ」とヤジを飛ばした男性が警察官に力づくで排除された。疑問を抱いた山崎さんらが実情を掘り下げた。

警察が善悪判断

 別の女子学生も安倍批判の言葉を叫んだとたんに警官に囲まれた。警官は「コーラですか、ジンジャエールですか、買ってあげますよ」と話しかけた。「女子学生の叫び、言論の自由に、120円のジンジャエールの価値しかないと、現場が考えているとしたら、大きな問題だ」と山崎さん。

 「年金100年安心プランどうなった?」のプラカードを手にした女性も警官に妨害された。安倍歓迎のプラカードを掲げる人には何もせず、批判をするプラカードは妨害する。信条の違いで排除しており「善悪を決めるのは警察という恐怖がある」と番組作りに至った動機を話した。

  ヤジをめぐっては「排除とは思わない」「なぜ問題なのか」と話す記者も周囲にはいた。街頭演説の現場には多くの記者がいてカメラを回していたが、堂々と警察官がヤジを排除した。番組では元北海道警の原田宏二さんがマスコミが無視された証左だと指摘。「報道の側で権力の暴走を食い止める力が弱くなっている」と山崎さんも危機感を語った。

再生は29万回超

 「たかがヤジ」と問題を軽く見る向きがある中で、山崎さんの頭に浮かんだのは反ナチ運動の牧師、ニーメラー(1892〜1984年)の詩だった。最初に共産主義者が攻撃されたとき、自分は関係ないと声をあげなかった。時を経て、やがて自分が攻撃されたときには、私のために声をあげる人はだれも残っていなかったという内容だ。「ヤジの権利を奪われると、やがてもっとひどいことになるのでは」と小さな芽の段階から対応する必要性に触れた。

  HBCの「ヤジと民主主義」は20年2月に放映後、ユーチューブで全国誰でも視聴できるようにした。1時間版の再生回数は29
万回以上に達した。「#検察庁法改正案に抗議します」で広がったツイッターデモ。最初の発信者であった笛美さんもこの番組で刺激を受け、ツイッターで声を上げ始めたのだという。

  北海道警はヤジ排除の根拠に警察官職務執行法第4条(避難等の措置)をあげた。だが「説明には無理がある」が専門家の見解だ。

  狂犬や暴れ馬が出た時に人を守る行動と、ヤジ排除が同じとは奇妙だ。市民とメディアの権力監視がますます大事だと話を聞きながら思った。
須貝道雄
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年3月25日号
posted by JCJ at 02:00 | オンライン講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする