2021年05月01日

【おすすめ本】佐藤学/上野千鶴子/内田樹 編『学問の自由が危ない 日本学術会議問題の深層』─政治権力が学問の自由を侵害、そこに孕む日本社会の危機=広渡清吾(東京大学名誉教授)

 菅首相は、第25期日本学術会議の新会員として推薦された105名の候補者のうち、6名の任命を拒否した。前代未聞のことである。
 評者は、青年時代から先輩の科学者たちが、学術会議の活動に献身してきたことを、ずっとみてきた。また、自らも長く会員として活動し、部長、副会長そして会長(第21期)を務めた。
 第二次安倍政権以来、首相の人事権が権力支配の手段と化しており、日本学術会議の会員任命に及ぶことを、ひそかに危惧していた。それはまた絶対にあってはならないことであった。
 本書は、この「事態」を13人の執筆者(おそらくこれ以上のラインナップは望めない)が渾身の怒りをもって解析する。

 任命を拒否された6氏もメッセージを寄せた。私たちが直面しているのは、政治権力による学問の自由の侵害であり、日本社会が孕む危機である。深刻なことに、政治権力はその危機を見ることができない。
 上野千鶴子、佐藤学、 長谷部恭男、杉田敦、高山佳奈子、木村草太、後藤弘子、池内了、内田樹、三島憲一、永田和宏、鷲谷いづみが、任命拒否の違憲・違法性、学問の自由、科学の意義、政治と科学、そして日本学術会議の貢献と役割を縦横に論じ、津田大介が学問の自由のために立ち上がった科学者コミュニティの運動を伝える。
 科学者だけで政治権力に抗し切ることはできない。科学は市民社会の知的活動であり、政治権力に対して科学を擁護する市民の力が、いま必要である。多くの皆さんに本書を読んでいただきたいと心から切に願う。(晶文社1700円)

                              
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posted by JCJ at 05:15 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする