2021年05月06日

【焦点】デジタル庁は「天上がり」天国 民間人材がぞろぞろ 政策立案に関与 新たな官民癒着の温床=橋詰雅博

 政府や自治体が保有する個人などのデジタル情報を集中管理するデジタル庁が9月に新設される。目玉政策として入れ込む菅義偉首相が長を務め統括するのも異例なら、実務の中心が民間出身者と非常勤の民間人という異例の役所だ。天下りの反対、民から国への天上がり職員≠ェ国民に重大な影響を及ぼす政策立案に深く関与する。

半数以上を占める
 デジタル庁では大臣、副大臣、政務官は言うまでもないが国会議員が務め、事務次官級のデジタル監は幹部官僚ではなく民間出身者が起用される。内閣人事局によると、立ち上げ人員500人のうち、民間などからの新規採用者が160人、兼業の非常勤職員107人、他府省からくる役人233人となっている。つまり天上がり職員が半数以上を占めるのである。なぜこれほど多くなるのだろうか。
「霞が関では、ITに強い役人はキャリア、ノンキャリアを含めほとんどいません。ITリテラシー≠フセンスを備えていないのです。新型コロナ感染者通知アプリ『COCOA』が不具合相次ぎ役に立たないのは、開発を請け負った業者任せで、ITに弱い役人のチェックが甘かったからです。頼りにできる役人がいないからデジタル庁はITリテラシーに長けた多くの民間の人材が必要。だから人員の半数以上を天上がり職員が占めてしまうのです」(全経済産業労組中央執行委員の飯塚盛康さん)

食い込みに躍起だ
 実際、ヤフーが傘下に入るZホールディングスの川邊健太郎社長が発表したデジタル庁私案≠ネどで「デジタル化の世界的潮流は民間部門が先行しているので構成人員は民間人を積極的に登用」「2000人のエンジニアが必要」「官僚を含む給与を民間相場にする」と強調している。
 IT業界は活発な動きをしている。
「NEC、NTTデータ、富士通、日立製作所などはITゼネコン≠ニ呼ばれている。建設業界のゼネコンと同じように多くの下請けや孫請け企業を傘下におさめて受注した仕事を下に発注する構図が似ているからです。そのITゼネコンはデジタル庁に優秀な社員を押し込めようとしている。『5年間デジタル庁で働き戻ってきたら重要ポストを用意しておくから』と社員を誘う会社もあるそうです。ただITゼネコンと威張ってもグローバルなビジネスの世界では太刀打ちできず、相手にされない。デジタル庁からの仕事は大きな規模が見込まれるので、稼ぐため食い込みに躍起だ」(IT業界関係者)
 天上がり職員が政府の政策立案などに関与するのは少なくない。経済界の要望を受け入れ1999年に成立した官民人事交流法に基づく企業からの出向者などがその人たちだ。果たしてどんな場面で彼らは絡んでくるのか。

赤旗日曜版が追及
 しんぶん赤旗日曜版が天上がり職員追及の特集を19年5月から9月に合計5回紙面に載せている。その内容は@厚労省労働条件政策課に出向していた佐川急便を傘下に持つSGホールディングスの社員は、トラックなどの労組団体が求める残業時間の上限規制の適用を見送る実行計画案づくりに関与A原発輸出をめざす日立製作所の社員は、経産省、文科省、内閣府の原発関連部署などに出向B厚労省水道課に出向したクボタと水ingの社員は水道法改正案の政策立案に関与し、水道事業への民間参入を実現―といった具合だ。
 利害関係者が官僚と同じ職場で働き、業界や自社が利益を得られるよう根回しする実態を明らかにしている。
 デジタル庁では、ITを自在に操る天上がり職員はさらに強い権限を発揮できそうだ。首相の名の下でほかの府省や自治体を指揮・監督が可能になる。
 となるとデジタル庁は新たな官民癒着の温床になるばかりでなく、国民に目を向けない天上がり職員が権力をふるう役所になりかねない。
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年4月25日号
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posted by JCJ at 02:00 | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする