2021年05月15日

【おすすめ本】アリシア・ガーザ『世界を動かす変革の力 ブラック・ライブズ・マター』─人種と性に基づく「二重差別」に立ち向かうBLM運動=矢部 武(ジャーナリスト)

 2020年5月以降、全米に広がった抗議運動「ブラック・ライブズ・ マター(BLM=黒人の命は大切だ)」。本書は この組織の共同代表がBLMの誕生と目的、未来の可能性などについて綴った物語だが、同時に社会に変革をもたらす運動を始めるには、どうすべきかを教えてくれる指南書でもある。
 1981年生まれの著者は20代初めから、差別や貧困、抑圧などと闘う団体で社会運動を組織化するオーガナイザーになるための経験を積む。そこで、「力がなければ自 分たちに損害を与えている地域社会を変えることはできない。そのためには人種・民族、性別など を超えた人々の連帯を築く必要がある」との教訓を学ぶ。黒人だけの組織には限界があり、何よりも過半数になり得ないからだ。

 著者はキング牧師やマルコムXなど過去の公民権運動指導者の功績を認めつつ、その問題点も指摘する。それは黒人男性を中心とした組織のなかで、女性が脇に追いやられていたことだという。
 自ら黒人女性として人種と性にもとづく「二重差別」を経験することにより、多角的な視点から物事を考えるようになったという著者は、2013年、他の黒人女性2人とBLMを創設した。
 BLM運動は、「米国だけでなく、欧州やアジアなど世界各地に広がり、人種的不公平に対し、人々の意識を高めた」という理由で、今年のノーベル平和賞候補にノミネートされている。これは分断と対立が進む世界に変革をもたらす、新しい21世紀型の運動モデルとなるかもしれない。 (人権学習コレクティブ監訳 明石書店2200円)
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posted by JCJ at 02:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする