2021年05月30日

【今週の風考計】5.30─住民を監視する「土地規制法案」の危ない内容

自分が持っている土地・建物は自分のものだ。なぜ政府が調査・監督に入り、個人情報を収集のうえ、売買までチェックするのか。
 6月16日の会期末まで残りわずか。ワクチン接種で大変な最中、国会では基本的人権を制限するトンデモナイ法案が、強行採決されようとしている。「土地規制法案」だ。

政府は、同案の目的は「安全保障の点から重要な施設の機能阻害行為が行われるリスクに対応する」ため、海外からのスパイ潜入や拠点づくり、破壊行為を未然に防ぐ目的で、土地や建物の購入・売買に規制をかけるという。
 自衛隊や米軍の基地、海上保安庁の施設、原発などの「重要施設」がある、周囲1キロ以内の土地や建物、さらには国境の離島などを加え計450カ所以上を「注視区域」に指定し、区域内の土地・建物を利用・売買する場合には、所有者や法人などに調査が入り、売買・利用の中止について勧告や命令を出すことができる。
さらに司令部機能を有する基地や施設周辺150カ所以上は「特別注視区域」に指定し、一定規模の土地・建物を売買する際には、事前の届け出を義務づけ、監督官庁からの査察や調査を受けなければならない。従わなければ、懲役2年以下または罰金200万円以下の刑事罰を科す。

しかも集めた個人や法人の調査情報を、内閣情報調査室や公安調査庁など政府機関の協力のもと必要な分析に回す扱いを否定しない。名前や住所、国籍、土地の利用状況にとどまらず思想・信条や所属団体、交友関係、海外渡航歴など、際限なく広がる恐れがある。
 肝心の「機能を阻害する行為」の内容がアイマイだからだ。法成立後に「基本方針」を閣議決定し、その内容に基づき施行するという。これでは国会のチェック機能は働かず、恣意的な運用のみならず、日常的に市民が監視され、人権侵害につながる危険は極めて大きい。

防衛省本庁のある東京・市ケ谷を考えてみよう。まず周辺1キロ以内は「特別注視区域」に指定されるから、既存のコンビニやビルを売買する際には、事前の届け出が義務づけられ、政府官庁から売買の相手先などの調査が入る。
 個人の土地や建物の売買だって、スパイの購入防止という目的からすれば、事前提出・調査のプロセスは免れない。それを懸念して、すでに不動産の売却価格が下落している。
 埼玉県にある米軍・所沢通信基地の周辺1キロには、並木通り団地800戸の住宅が密集している。その住民を国が情報収集の対象にして監視するのだから、穏やかではない。

多くの米軍基地や自衛隊施設がある沖縄県民に至っては、誰もが調査規制対象となり、知らないうちに監視下に置かれる。
 あの自民党の杉田水脈議員が、鉄面皮にも「土地規制法案」を審議する委員会で、「辺野古基地建設に反対する市民の食べた弁当ゴミが、米軍基地の機能を阻害する恐れがある」と、同法案の拡充を求める発言までしている。狙いがはっきりした、廃案しかない。(2021/5/30)
posted by JCJ at 02:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする