2021年06月07日

【焦点】「ベンダーロックイン」にメス入るか 公取委が調査に乗り出す=橋詰雅博

 特定のIT企業だけが大きな利益を得られる「ベンダーロックイン」にメスが入るのだろうか――ベンダーロックインは、国や地方などの情報システムを受注したIT企業(ベンダー)が開発した自社仕様によって構築することで、他社の参入が困難になる状況を言う。官公庁やIT業界などでは何年も前からこの弊害が指摘されていたが、会計検査院が5月に公表した調査でようやく実態が分かった。
 それによると省庁が調達した情報システムの設計・開発などに関わる競争契約423件のうち、参加した業者が1者のみの1者応札≠フ割合が74%だった。IT企業は省庁のシステム入札前に中身を事前にキャッチし、役所に自社仕様の売り込みを続ける。成功すれば、他社は参加をあきらめてしまう。この結果、新規開発が1者応札になる。
  さらに一度受注すれば、そのあとの改修も他社が入る余地がなくなり改修の仕事を何回もやれる。企業はこの改修で十分な利益を得られるので、安い金額でも受注するのだ。実際、会計検査の調査でも新規開発よりも改修の仕事が多かった。1者応札では競争原理が働かず、改修の入札額の高止まりにもつながるのは言うまでもない。こうしたことは地方自治体の情報システム契約でも中央省庁と同じくベンダーロックインが横行している。
 企業の言われるままに契約する主たる原因は、ITリテラシーを理解する役人がほとんどいないからだ。
 会計検査院の調査を受けて公正取引員会は、ベンダーロックインが独占禁止法にふれるかどうか調査に乗り出した。国や地方自治体を含む約1800の行政機関に書面の調査票を送った。この先、ヒヤリングの実施も行う見込み。
  9月に新設のデジタル庁は国と地方自治体が相乗りするシステムで情報の利活用をする。これを構築するのは大手IT企業だ。同庁職員500人のうち120人ほどは民間出身者ないしは非常勤の民間人材を充てる。大手IT企業社員がかなり起用される。ここでもベンダーロックインが起きる可能性はある。
 公正取引委員会はデジタル庁にも目を光らせてほしい。
橋詰雅博
posted by JCJ at 01:00 | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする