2021年06月12日

【オンライン講演】監視強化に進むデジタル法 大住弁護士が講演 個人情報保護は二の次=須貝道雄

デジタル監視法の危険性を語る大住弁護士.jpg

デジタル庁創設などを規定した「デジタル改革関連法」が5月12日、成立した。JCJはそれに先立つ4月24日、同法の問題点を考えるオンライン講演会を開いた。講師の弁護士、大住広太さん(写真)は同法を「デジタル監視法案」と呼ぶのがふさわしいと指摘。政府・警察や企業による個人情報の利活用が優先され、市民のプライバシーは危険にさらされると警鐘を鳴らした。

AIによる悪用
生年月日や住所、健康状態、趣味嗜好といった個人情報が政府や企業によって吸い上げられ、データベース化されると、AI(人工知能)が発達した現在では思わぬ形で利用される。大住弁護士は例をあげて説明した。
 米国の一部裁判所では、いくつかの個人情報をもとにAIで再犯率を計算し、判決で執行猶予を付けるか否かなどの判断材料に採用している。フェイスブックから大量の個人情報入手し、的を絞って政治広告に生かした疑惑(ケンブリッジ・アナリティカ事件)も米大統領選挙であった。日本も例外ではない。就職活動支援で集めた学生らの個人情報を分析し、内定辞退率を企業向けに販売したリクナビ事件は耳に新しい。
  デジタル監視法のもとで創設されるデジタル庁はマイナンバーカードの利用を推進する。同カードは健康保険証、運転免許証、銀行口座、国家資格などと関連付けられる予定で、デジタル庁には膨大な個人情報が集まる。自治体の持つ個人情報も一元管理が可能となる。

政府と警察接近
この情報を誰がどのように利用するかが問題だ。デジタル庁のトップは首相で、強大な権限を持つ。情報機関の内閣情報調査室と連携して仕事をする可能性が高く、かつ内閣官房では警察出身者が要職についている。法律では「相当な理由」があれば行政組織間で個人情報のやり取りができる。個人情報をめぐって「政府と警察の接近が進む」と大住弁護士。市民監視、治安維持に重点利用される可能性が高い。
もう一つは民間のIT企業が食い込む恐れだ。デジタル庁には特別職のデジタル監一人を置き、民間から起用する方針だ。職員(100人程度)も民間から週3日勤務の非常勤で採用する。IT企業の自席からパソコンで役所の仕事をする勤務も可能で、「所属するデジタル企業に有利な政策判断がされやすくなる」
民間企業による個人情報の第三者への提供には@法令にもとづくA国への協力B学術研究の目的――の条件クリアが必要だが、解釈はいかようにもでき、本人同意のないまま個人情報の流出が広がる懸念も強いという。
公的給付金を素早く受け取ることができる、書類の押印を省くなど、デジタル化の利便性を政府は強調する。だがその利点はわずかで、同法の主眼は、中央に吸い上げた個人情報を政府・企業が市民監視や経済目的に円滑に活用できるようにする点にある。情報保護は二の次だ。

データの支配権
これに対しEUには一般データ保護規則(GDPR)があり「自然人は自身の個人データの支配権を持つべきである」(前文)との原則を掲げている。勝手に本人に無断で個人情報を第三者に提供できないよう「情報の自己コントロール権」をうたっているのである。
具体的には情報主体によるアクセス権、消去の権利、自動化による決定(AI活用)の対象とされない権利などだ。今回の日本の法律にはこの権利規定が不十分で「AIが広まった社会に対応していない」と大住弁護士は批判した。
これまで個人情報は各自治体と政府の間で分散して収集・管理していた。デジタル庁で一元管理されるとサイバー攻撃に脆弱となり、情報漏れが起きると被害は甚大になる。こうした難点にも法は目をつぶっている。
端的に表現すると、日本のデジタル化は「欧米型とは異なり、監視社会の中国型」。個人情報の利活用に歯止めをかける適切な規制が不可欠だと提言した。
須貝道雄
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号
posted by JCJ at 01:00 | オンライン講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする