2021年06月18日

【おすすめ本】松田 浩『メディア支配 その歴史と構造 』─「深刻な現実」への危機意識 闘うジャーナリズムの構築を=栩木 誠(日経支部)

日本でテレビ放送が始まった1953年、日本経済新聞に入社した著者は、組合やJCJ活動などで活躍しながら、「ラテ(ラジオ・テレビ)欄」などを担当する電波報道部に配転となった。
 しかし、このことが半世紀以上にわたり、最前線の放送ジャーナリスト・研究者として活躍、 多大な実績を記す出発点となった。本書はメディアの現場で闘い、研究を続けてきた歩みの集大成であり、遺著である。
 いま政府・官邸によるニュース・情報番組への介入、NHKや一部民放幹部などによる忖度が、一段と激しさを増す。
 吉田内閣による電波監理委員会の廃止を一里塚に、1960年代後半から70年代前半にかけての5大全国紙とテレビ・キー局の資本系列一本化、テレビの多局化と再編成、さらには「権力の番犬」であるべき新聞テレビの「情報産業」化と ジャーナリズムの変質。
 さらに政府によるメディア統制の野望と波状攻撃の中で、「政権に同調的なマスネディアが作られてきた」ことを、本書は解き明かす。戦後マスメディア史の優れた概説書でもある。
 本書に流れる基調は、「言論・表現の自由の危機」に対して、「権力の番犬」としての役目を十分に果たしてこなかった「マスメディアの深刻な現実」への危機意識と怒りである。
 「いま何より急務なのは、この日本の現実を国民一人一人が見極めること、そしてなぜこういう事態になったかを歴史に学ぶこと、この二点ではないだろうか」
 視力の衰えに抗しつつ1文字1文字に全思いを傾注した著者の後輩として、行間から溢れる「闘うジャーナリズム」の心を継承したいと思う。(新日本出版社1900円)

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posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする