2021年06月21日

【オンライン講演会】スクープの秘訣を語る 文春編集局長 赤旗日曜版編集長が対談=古川英一

                                
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         対談する山本赤旗日曜版編集長(左)と新谷文春編集局長

 菅首相の長男と総務省の幹部との会食問題や、学術会議の任命拒否問題など、政治権力の在り方を世の中に問う大スクープ。「週刊文春」と「しんぶん赤旗」は次々にこうしたスクープで権力の闇を暴いてきた。このメディアとしての「元気さ」はなぜ?4月のJCJのオンライン講演会は「週刊文春」の新谷学編集局長と、「しんぶん赤旗」の山本豊彦日曜版編集長の2人に対談で、「スクープの秘訣」について語ってもらった。聞き手は藤森研JCJ代表委員。
―スクープとは?
 新谷 相手がいかに強かろうが書くものは書く。読者の声援を背に闘い続ける。そして闘い続けるメディアに情報は集まる。世の中に問いたいと思った時に、文春だったら相手に権力があろうが忖度しないだろうと思ってもらえる。なぜスクープを狙うのか、前のめりになって、とことん問い続けている。
 山本 赤旗や文春はタブーなく物が言える。今の日本のメディアにとって、そこが大きな問題ではないか。そして文春や赤旗でしか報じないものが売れる。活字媒体が売れない中で、どうすれば売れるのか、それがスクープ、読んで得になる情報を出していく。
―具体的事例は?
 山本 安倍前首相の「桜を見る会」の問題は、国会で、財務省が予算を毎年増やしていることが明らかにされたことがきっかけ。なぜ増やしているのか、違和感を感じて取材を始めた。公開されている情報になぜ、ほかのメディアが気づかなかったのか。学術会議の問題でも、拒否された学者がフェイスブックに載せたのを見つけ、これは大変だと取材した。ほかの社も書くかと思ったら、記事として出したのは赤旗だけで、スクープに。
 新谷 舛添元東京都知事の、公用車で別荘通いのスクープは、記者がアンテナを張っていた都の幹部がポツリと「公用車の使い方が」とつぶやいたのがきっかけ。そこで情報公開で知事の動きを確かめ、別荘の前で張り込んでいたところ、知事が公用車で現れた。
―どうすれば?
 新谷 問題意識を持つこと。基本的に「週刊文春」はど真ん中を目指す。左右どちらかの主張にとらわれず、フラットな目線で。スクープは、編集長が腹をくくることが必要。甘利大臣の現金受領スクープについても「大臣室で現金を受け取った」という情報が入った時、まさかと思った。でも本当だったら大変なこと。取材には経費や人手もかかるが、そこで一歩を踏み出せるかどうか、編集長の覚悟が問われる。
 山本 記者はやらされている仕事をこなすのではなく、自分で探し、自分の目で確かめていく、「向かっていく」という姿勢を。そして記者は「この問題ならこの人に聞く」という人間関係を持っているかどうか。「桜を見る会」の取材でも保守系の人ともつきあう中で情報を積み上げていった。相手は本気。全人格をかけて勝負しない限りネタは取れない。
―今のメディアは?
 山本 スクープを出せないということはマスメディアの劣化。今求められているのは。「前うち」ではなく「独自ネタ」。大手メディアはそこにシフトできていない。それは記者の問題ではなくデスクや編集幹部の問題ではないか。
新谷 スクープが、組織の小さい文春、とは健全なメディア状況とはいえない。またデジタルの時代に新聞やTVのビジネスモデルは崩壊していると思う。ダイナミックなデジタルシフトが必要ではないか。
―最後に一言
 新谷 後に続く若い人たちにスクープのおもしろさ、気持ちよさを味わってほしい。いろいろなメディアがしのぎを削っていきたい。
 山本 なぜスクープを、それはおもしろいから。おもしろがらないと話が始まらない。そしてメディア全体が元気にならないと。
 古川英一
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年5月25日号

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