2021年07月05日

【月刊マスコミ評・新聞】菅政権批判 単発でいいか=白垣詔男

 「東京オリンピック・パラリンピック」に関する新聞各紙の社説は、政府に対する姿勢が、いつものようにくっきり分かれていた。権力監視が最大の役目である「ジャーナリズム」を守る姿勢を見せる朝日、毎日、西日本と「政府側から発想する非ジャーナリズム」読売、産経。
 社説の見出しは「理解得られぬなら中止を」(西日本5月25日)、「中止の決断を首相に求める」(朝日5月26日)、「緊急事態宣言の再延長 五輪優先の解除許されぬ」(毎日5月29日)、と「中止」に重点を置く3紙に対し、「開催へ感染防止を徹底せよ」(読売5月28日)、「開催努力あきらめるな 菅首相は大会の意義を語れ」(産経5月28日)と「開催」に賛意を示す。ただ、産経は「政府や組織委が掲げる『安全・安心な大会運営』は前提であって答えではない。開催意義をあいまいにしたまま『安全・安心』を繰り返しても、国民の理解は広がらない。菅義偉首相にはそこを明確に語ってもらいたい」と注文を付ける。
 ところで、「五輪開催」の是非を語るとき、「ワクチン接種の大幅遅れが国民に不安を与えている」ことに連動して触れる新聞(放送も)が皆無なのは視野狭さくだ。ワクチン接種が進んで、既にマスク不要やレストランの通常営業を再開した国もあるが、日本は「7月中に高齢者に接種」と後手後手の政権運営。なぜワクチンの輸入が遅れたのか。ワクチン接種の遅れは日本の外交力の弱さである。五輪開催の是非論議が今ごろ盛んになったことに不快ささえ覚える。大いなる政府の失政を日本のマスコミは指摘しない。
 目の前にある大きな問題を単発的に報道して、その原因である失政や外交力の弱さに言及しないマスコミの姿勢は疑問だ。
 東京、大阪のワクチン大規模接種会場の運営に自衛隊が当たった。コロナ禍は日本の安全保障問題なのに、自衛隊の活用を閣議や防衛省への指示だけでやってしまうのは疑問だ。政府の安全保障に対する考え方は「米国からの兵器爆買い」しか頭にないのか。自衛隊を動員するなら「国家安全保障会議」(議長は首相)を開いて決めるべきではなかったか。「国民の安全・安心を守る」を繰り返すだけの菅首相の「安全保障観」はどうなっているのか。
 白垣詔男
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
posted by JCJ at 01:00 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする