2021年07月16日

【裁判】幸福の科学公開施設 入ったら建造物侵入罪 取材の自由を奪う地裁判決=藤倉善郎

                            
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3月15日、東京地裁で罰金10万円、執行猶予2年の有罪判決が言い渡された。私が幸福の科学の「初転法輪記念館」に取材に入ったことが建造物侵入罪に問われた事件である。
 この施設は、教団設立の際に教祖・大川隆法が初めて説法を行った場所として、教団が一般公開している。私が入った際、中は無人だった。撮影禁止の張り紙に気づかず写真を撮っていたところ、教団職員が来て写真を消すように指示してきた。私は素直に従った。職員は怒る様子もなく、パンフレットまでくれた。しかし翌日、幸福の科学は地元・荒川警察署に被害届を出した。

 立入禁止は不当
建造物侵入罪は、管理者の意思に反して立ち入る行為を指す。初転法輪記念館(写真下)は一般公開だが、教団本部は以前から私に対して教団施設や行事への立入禁止を通告していた。これを根拠に検察は建造物侵入罪にあたると主張。紀藤正樹弁護士を主任弁護人とする8人の弁護団は、一般公開施設への取材は正当業務行為に当たること、教団による立入禁止通告が不当であることなどを理由に無罪を主張。これを罰することは表現の自由を定める憲法に反するとした。
 私は宗教団体を含め、いわゆる「カルト問題」を20年ほど取材している。幸福の科学から「立入禁止」を通告されたのは2012年。週刊新潮で「幸福の科学学園」(中学・高校、栃木県那須町)の違法な教育実態をリポートしたことが理由だ。
 当時、教団は新潮社と私を相手取って1億円の損害賠償を求める民事訴訟も起した。この訴訟では2016年、最高裁が学園側の上告を不受理とし、学園側の敗訴が確定。高裁判決は、記事の全てに真実性や評論の妥当性を認める内容だった。
 ところが教団は以降も「立入禁止」を継続した。私はいわば、正しい記事を書いたから立入禁止にされ、それゆえに今回、刑事被告人にされた。
 地裁判決は検察側の主張をほぼ踏襲。管理者の意思は取材の自由に劣後しないとした。教団による立入禁止の理由については「議論の余地はある」とし、これを踏まえた温情であるかのように、罰金刑に執行猶予が付く珍しい判決となった。

 おもねる方向に
しかし有罪は有罪だ。合法的に取材するなら、立入禁止を通告されないよう教団におもねった記事を書くしかない。地裁判決がもたらすのは、そういう論理である。
 過去、マンション等での政治ビラ投函を巡って、表現の自由と建造物侵入罪の兼ね合いが争われた事例はある(いずれも最高裁で有罪が確定)。しかし報道の自由との兼ね合いが争われるのは今回が初めて。日本初の悪しき前例となってしまった。
 私は別件も抱えている。統一教会との関係を取材するため2019年に菅原一秀衆議院議員の事務所に取材を申し入れに行き、奥のソファに通され「お待ち下さい」と言われ待っていると、秘書が110番通報。後日、同行したジャーナリストの鈴木エイト氏ともども刑事告訴、書類送検された。容疑は建造物侵入罪。
 直後、経産相に就任した菅原氏の会見を取材しに行った私と鈴木氏は、経産省からも「永劫に」出入禁止を告げられた。今後、庁舎に立ち入れば新たな容疑を着せられることになるのだろう。
 今のところ、立件は有罪判決を受けた1件だけ。現在、控訴中だ。
詳細は「藤倉氏を支える会」のウェブサイト(https://www.fujikura-hs.com/)に掲載されている。
藤倉善郎(ジャーナリスト)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
                             
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posted by JCJ at 01:00 | 裁判 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする