2021年07月22日

【おすすめ本】半田 滋『変貌する日本の安全保障』─「引き裂かれた安全保障問題」の根源を読み解く絶好の書=前田哲男(ジャーナリスト)

 本書は、学生に向けたオンライン授業を基にしているが、それにとどまらず若い世代(とりわけ記者)に「自衛隊の今」を伝える一冊となった。
 「安倍安保」ともいうべき長期政権のもと進行した「9条と同盟」の矛盾、また「専守防衛か敵基地攻撃か」をめぐる葛藤。その相克は、菅政権下においても「台湾海峡防衛」に継承され、亀裂は極限に達した観がある。若者ならずとも「法と現実」のもたらす落差に目くるめく思いだ。

 12講に区切られた各章には、著者の強みである編集委員としての現場主義と、論説委員の本領の両面、いわば“腰の軽さ”と“論の重厚さ”がほどよく溶けあい、自衛隊海外活動の現状と、そこに至った時代の流れを織りまぜ、自衛隊の歩んだ道が記述される。話し言葉による文体も説得的だ。
 読者には、自分の関心にそって読むことをお勧めする。沖縄のことなら「第3回 沖縄の米軍基地」から。最新ニュースなら「第10回 ミサイル防衛とイージス・アショア」、また「安倍安保」の本質を知るには「第12回 安全保障関連法」といったように。興味のおもむくまま読めばいい。

 そうすると、なぜ「護衛艦いずもの空母化」が必要なのか? なぜ「非核3原則が国是であるのに核兵器禁止条約を批准しないのか?」などの疑問が解けてくる。PKO派遣という “戦闘への接近” も、著者の現地取材によって容赦なく実態が暴かれる。
 コロナとオリンピック問題のあおりで、最近あまり大見出しにならない「引き裂かれた安全保障問題」の根源を読む良書である。(弓立社2500円)
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posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする