2021年07月26日

【焦点】デジタル先進国・フィランド発展の秘密は国民の信頼 政治不信の日本は実現できるか=橋詰雅博

次世代通信規格6Gの研究開発で、日本は北欧のフィランドと連携協定を結んだ。フィランドは通信機器メーカーの世界大手ノキアを生んだ欧州一のデジタル国家だ。デジタル先駆者のフィランドと比べ、今の日本はデジタル敗戦。この差は何なのか。

 2年連続トップ
 欧州連合(EU)加盟28カ国のデジタル人材や技術、公共サービスなど5項目で算出した「デジタル経済社会指数」ランキングで、フィランドは2019年、20年と第一位だ。フィランドのデジタル化はどう進展してきたのか。5月21日、朝日新聞のオンラインイベント「デジタル国家の秘密とは」でフィランド発のIT企業「リアクタージャパン」のエンジニア、ラウラ・タルキアイネンさんはこう語った。
 「政府は90年代から個人ID番号(国民背番号制度、日本のマイナンバーに当たる)デジタル化を進め、IDで医療や介護、パスポート申請などの手続きがオンラインで可能にした。コロナ禍前からオンライン授業を始めた小学校は、感染拡大で完全オンライン化された。リモートワークも働き手の60%がコロナ禍前から始めており、欧州で最も高い割合だ」

  AI講座無料提供
フィランドは、国立ヘルシンキ大学とリアクター社が開発したAIを基礎から学べるオンライン講座を19年から無料で提供。今では20数カ国語で受けられ受講者は65万人に。受講した朝日の女性記者は「ITリテラシーがなくても受講できAI教育のギャップを埋められる」と体験を話した。
 録画で特別出演のマリア・ニッキラ財務省情報管理シニアアドバイザーは「デジタル化での経費削減は納税者にも恩恵がでた。基礎以上のデジタルスキルがある人材も人口の80%近くと、EUの平均以上」と述べた。デジタル国家に発展した秘密は「国民の政府への信頼」とマリアさんは指摘した。

 幸福度も第一位
 ラウラさんは「国民が政治家を身近に感じ、人口の半分近い250万人がコロナ通知確認アプリを利用。それは政府への信頼があるから」と語る。
 国連の21年版幸福度ランキングでフィランドは4年連続一位。国民の政府への信頼が厚く、政府もよりよい公共サービス提供で国民の期待に応えようとする。高い幸福度が好循環が支えているようだ。
 幸福度56位の日本では、役に立たない通知確認アプリや給付金受け取りなどで使い勝手の悪いデジタルサービスに振り回され、デジタル法成立で同意なき個人データ利活用の恐れで政治不信が深まる。フィランドの高度なデジタルネットワーク構築は政府と国民一体となって進んだ。その鍵は政府への信頼感。だが日本では政府が信頼されているか。これで血の通うネットワークが築けるのだろうか。 
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年6月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする