2021年07月29日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】AMラジオ切り捨てでいいか

 全国の民放ラジオ局44局がAM放送からFM放送に全面転換すると発表した(6/15)。FMへの移行は2028年までにはほぼ完了するという。
 ラジオといえばAMでの放送が定番だった。AM電波は広範な地域に電波を飛ばせるという特徴があるが、ビル障害に弱い。そこで設備を手軽に設置できるFM電波を併用する「ワイドFM」が採用され、2014年以降、ラジオ局がAMとFM電波の二つを使うことになった。
 ところがラジオ経営の悪化から、今度は2重負担が重荷としてのしかかるようになった。その上送信アンテナの設備更新などが迫られる時期が重なっている。いっそのこと設備が手軽なFM一本にしては、ということになった。推進したのは、高層ビルの林立で、ラジオ電波の難聴に悩んできたTBSラジオ、文化放送、ニッポン放送の基幹三局だ。
 今回の発表には北海道と秋田の民放3局が参加していない。広大な北海道全域をFM電波ではカバーしようとすれば、かえって膨大は経費がかかる。ABS秋田放送の場合も山間地が多く、FM放送でラジオ世帯の90%をカバーする経営体力がないという。北海道、秋田以外にも、県域局で電波が届かない山間部を取り残したままでFM転換する局も多い。
 さらに大きな問題は「ワイドFM」受信機そのものの普及率が53%にとどまることだ(三菱総研調査、19年)。「ワイドFM」を受信するためには90~94.9メガヘルツの周波数帯域を受信できることが必要だ。しかし多くの家庭で長年使われているラジオは90メガヘルツ未満の目盛りしかないので「ワイドFM」は受信できない。長年ラジオに親しんできた人の半数近くが切り捨てられる。
 ラジオの開始は1925年(大正14年)、96年の歴史を刻む。民放の開始(1951年)で一時期メディアの最先端に立った時もある。貴重なメディアだ。
 最近ラジオ聴取者が緩やかに増え、首都圏で週86万人を超えているという調査がある(20年6月ビデオリサーチ)。コロナ時代、在宅勤務など生活環境の変化から人々がラジオの有用性を見直し始めているのに、AMラジオ切り捨ては合点がいかない。
隅井孝雄(ジャーナリスト)。
               
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          大正、昭和初期のラジオ    
posted by JCJ at 01:00 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする