2021年08月11日

【事件】愛知リコール不思議 「不自由展その後」余聞=加藤剛

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 2019年の国際芸術祭・愛知トリエンナーレは主催者に愛知県と名古屋市が中核団体として加わり、代表が大村知事、代表代行が河村市長と言う体制でスタートした。

知事、市長なぜ対立
 ところが芸術祭の一部「表現の不自由展・その後」の展示作品(平和の少女像など)にネットで非難が出始め代表代行の河村氏が2日目に展示を見てその場で突如反対を叫び紛糾した。
 主催者の代表代行が展示を見て驚き代表に抗議するということは普通にはあり得ないことだ。前日に大阪市の松井市長から河村市長に展示のことで電話があったと言うから、その電話が重要な役割を果たしたのではないだろうか。

言いだしっぺは誰?
 大村愛知県知事へのリコール運動はクリニック院長の高須克哉氏が代表格で会長、河村市長が有力な応援団員という2人3脚の形で始まった。
ところが署名の不正・偽造が云々されるようになると、高須会長は「リコールをしようと思うが手伝ってくれるかという話が河村市長からあり、それが始まりだ」と言うようになった。一方河村氏は「高須さんからリコールの話があり、私は応援隊だ」と真っ向対立、怒った高須氏はメディア上で「もう河村氏とは絶交だ」と宣言、「この指とまれ」と言い出したのは誰か、今も謎となっている。

 目の敵にも順位?
 一昨年の「言論の不自由展・その後」では、展示作品への抗議は「平和の少女像」に集中、河村市長も少女像を目の敵にしていた。当時の「嫌韓ブーム」に背中を押されたかもしれない。
 一方、半年後の大村知事リコール運動では「天皇陛下の写真を燃やす作品に分担金を出せという大村知事はやめてチョウ」というのが謳い文句となった。その方が署名を取りやすいという判断があったのだろう。
 
 大宣伝、署名伸びず
リコール運動には百田直樹氏やデビ夫人ら著名人が応援に加わりメディアへの露出は派手だった。実際の活動はコツコツと署名を集める受任者たちに依存するが、その受任者の数が十分確保されなかったようで、私の周辺では署名したという話は皆無に近かった。街頭署名も実際に動くのは河村系地域政党「減税日本」や「維新」、「日本第一党」などの関係者が中心だった。
 昨年秋の締め切り直前に提出された署名は43万2千余人で必要数86万6千に程遠くリコールは不成立となった
 
 偽造決断、真相は?
普通ならそれで幕となるのだが選管の調査で集まった署名のうち36万人分(83%)が不正・無効と分かりアルバイトによる名簿の書き写し、一人で何人分もの拇印押しも判明、運動を取り仕切った田中孝博事務局長(元維新県議)らが地方自治法違反で逮捕、送検された。
田中事務局長は自白を拒んでおり法廷で真相がどこまで判明するか注目される。

 崩壊した「完全犯罪」
 この間のツイッターなどSNSをまとめた人のリポートによるとリコール運動に共鳴し署名集めに協力した人たちの中には集まった署名に「おかしいぞ」と疑念を抱く人が何人もおり中には「スパイの仕業ではないか」と疑い不正署名の束を抜き取って隠し、高須会長から窃盗の罪で告発された人もいたという。このため「不成立」なら団体にそのまま返還されるはずの署名が選管の管理下に置かれ選管の告発で警察の出番となった。団体の内部では、「不成立でも43万人以上がリコールを求めた」となれば知事を辞任に追い込むことができる」と言う話もささやかれていたという。そういう目論見も偽造の露見で雲散霧消した。
 7不思議の7番目は今年の「不自由展その後」への爆竹脅迫と会場閉鎖に関連するが捜査中でもあり割愛する。
加藤 剛
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年7月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 東海・中部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする