2021年08月21日

【メディアウオッチ】広がる「取材は迷惑論」世界報道自由デーで澤氏 情報公開阻む壁=須貝道雄 

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 第5回世界報道の自由デー・フォーラムが6月27日、オンラインで開催された。テーマは「アジアの報道の自由とジャーナリズム」。法政大学図書館司書課程の主催でJCJも共催した。

 コロナ禍で制限
 最初に、国境なき記者団東アジア支局長のセドリック・アルビアーニさん(写真上)が世界の状況について報告。報道の自由度ランキングで180か国・地域を調べたところ、70%の人たちが環境が「悪くなった」と回答したという。「独裁的な政権の国では、コロナ問題を報道の自由を抑え込む絶好の機会ととらえ、情報を制限する動きが多くみられる」と指摘した。
 日本でもコロナを利用し報道制限をする動きがある。政府の記者会見で「開催回数と参加人数が 減らされている」と強調。「希望する記者が全員入れる大部屋を政府が用意することは可能だ」と批判し た。
 危険を冒して戦場取材をした安田純平さんと常岡浩介さんに対し、外務省がパスポートの発行を拒否している問題にも触れ、
「彼らは情報のヒーローだと思う。もっと応援すべきで罰を与えるべきではない」と語った。
 続いて元共同通信記者でジャーナリストの澤康臣さん(専修大学教授=写真下)が報道の自由に関し、日本が抱える問題点について報告した。
 冒頭に取り上げたのは、メディアの取材を「迷惑行為」と指弾し、情報公開を阻む理由にする風潮だ。たとえば6月に国が公開した赤木ファイル。森友学園問題にからむ公文書改ざん事件の経緯がファイルには書かれている。ところが400か所が黒塗りだった。改ざんを指示した財務省の係長らの名前をわからなくしていた。

 減点法の発想に
その理由を国側は「取材等が殺到することにより、当該職員はもとより、その家族の私生活の平穏が脅かされるおそれがある」と文書で説明した。
 取材は迷惑行為とする国の言い分に対し、澤さんは「文書改ざんにかかわった公務員の名前は、皆に明らかにすべき公共情報である。個人が特定できなければ事実の検証ができない」と反論。こうした「取材=迷惑行為」論が日本の報道の自由に対する圧力の典型だと訴えた。
 その関連で1980年代以降「何を報じるか」よりも、「報道被害を出さない」方向にメディア倫理の議論の軸足が移ったと澤さんは分析。より内容ある報道をする加点法の考え方は弱く、相手に迷惑をかけていないか気にする「減点法のジャーナリズム」が現場に影響を与えていると話した。それが悪用される危険性も高いと警鐘を鳴らした。
  須貝道雄
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年7月25日号
専修大学教授の澤康臣さん.jpg
posted by JCJ at 01:00 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする