2021年08月22日

【今週の風考計】8.22─入管庁:黒塗り1万5113枚と手数料15万円の醜悪さ

★スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が、名古屋の入管収容施設で死亡した事件に関連し、遺族側が17日に会見を開いた。
 名古屋入管は10日に発表した、対応を正当化し死因を特定しない96ページの最終報告書に続き、遺族側が求めていた真相究明に必要な公文書の開示請求に対し、関連の行政文書を開示した。だが肝心の監視カメラ映像は不開示とされた。その経緯に関する会見だ。

★8月2日、段ボール3箱が遺族側に届いた。開封して点検してみると、なんと1万5113枚に及ぶ文書のほぼ全てが、黒塗り状態だった。その一部が会見場の後ろの壁に貼られた。その白い壁が真っ黒な暗幕に覆われているような光景に唖然とした。
 ウィシュマさんの妹ポールニマさん(27)は17日の会見で、「文書がこんなに黒塗りされたら、報告書の内容も信用できない。入管は姉が殺されたことを隠したいのではないか」と不信感をあらわにし、「入管は意味のある部分は黒塗りした紙にし、映像も含めブラックボックスに入れ、何も情報を出さない。まったく反省していない」と、遺族側が反論した。当然だ。

★しかも入管庁は「開示実施手数料」として、遺族側に15万円を超す金額を請求し納入させている。ジャーナリストの北丸雄二さんが、この15万円について触れている(東京新聞「本音のコラム」8/20付)。
 「行政文書の開示請求に係る手数料」の規定に従った措置だとしても、黒塗りの行政文書を、「行政文書の開示」だと強弁するにも程がある。文字が真っ黒に消された1万5113枚の紙に、15万円も支払う義務があるのか。
★名古屋入管職員は、上司の顔色を窺い、黙々と命令に従い、1万5113枚に及ぶ文書の黒塗りに、Acrobat Proを使うか他の作業を加えて、懸命になっていた姿を思うと、どこか歪んでいるとしか言いようがない。誰か一人でも、異を唱える人はいなかったのか。
 ウィシュマさんの死という痛ましい事件への反省や責任、そしてこれからの対応に腐心すべきだと、進言する者はいなかったのか。

★思い返そう3月6日、ウィシュマさんは食事や薬が服用できなくなり、死亡直前にもかかわらず、収容施設の職員から「鼻から牛乳や」「ねえ、薬きまってる?」などの嘲笑が浴びせられていた。身動きできなくなる彼女を目の前にしながら病院にさえ、連れていかなかった。
 ウィシュマさんの悲痛な叫びと失われた命への想いが、半年もたたないのに、名古屋入管職員の黒塗り作業で封じられるのでは、あまりにも悲しすぎる。
★「2007年以降、ウィシュマさんを含め17人が入管施設で命を落としている。現在、日本には288万人を超える在留外国人がいる。この人たちなくして日本の経済社会は成り立たない。彼らは異質な人びとではなく、共生していく仲間なのだ」(望月衣塑子)。
 入管庁も私達も、失われた在留外国人の命の重さを、真剣に受け止めねばならない。(2021/8/22)
posted by JCJ at 06:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする