2021年08月31日

【月刊マスコミ評・出版】日米安保70年特集『世界』に拍手=荒屋敷 宏

 重症以外は自宅療養≠ニの菅義偉首相の新方針が、国民を安心・安全にさせるどころか、恐怖のどん底に陥れている。新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染力は、すさまじい。『サンデー毎日』8月15日・22日合併号の「東京9月 医療崩壊へのカウントダウン」(鈴木隆祐氏)は、米紙ワシントン・ポストの情報として、水ぼうそうと同じぐらい、普通の風邪より素早く感染する、と伝えている。東京の感染者数、菅首相の発言は、医療崩壊が起きていることを雄弁に物語っている。
 「桜を見る会」前夜祭をめぐり公職選挙法違反容疑などで告発され、不起訴処分となっていた安倍晋三前首相に対して、東京第1検察審査会が「不起訴不当」と議決した(7月30日)。その安倍前首相は自宅謹慎かと思いきや、『正論』9月号の鼎談で、「強固な日米同盟が絶対的に必要です」と吠えている。同誌には新型コロナの「コ」の字もなく、「軍事力増強」の主張であふれかえっている。76年前に終結した侵略戦争と、戦争犯罪への反省も皆無である。
 日本列島を米軍の最前線拠点へ改造しようとする菅首相、安倍前首相らの政策に対抗しているのが『世界』9月号の特集「最前線列島―日米安保70年」だ。
 軍事ジャーナリストの前田哲男氏は、パンデミックのもとで進む日本の〈戦争への接近〉に警鐘を鳴らしている。「安保法制(戦争法)」(2015年)以降、今年4月の「菅・バイデン会談」の「台湾海峡」への言及に至る経過を整理している。「日米同盟=日米安保条約こそが真の〈国体〉」という構造から脱却し、過去の国際条約に学び、協調的安全保障への転換を、と前田氏は呼びかけている。
 同誌でジャーナリストの吉田敏浩氏の「米軍横田基地」は、日本の主権を侵害する同基地の現状を示すリポートとして詳細を極めている。憲法史研究者の古関彰一氏の論文「戦後日本の主権と領土 日米安保70年の現在」は、日本の主権意識の希薄さをあぶりだしている。古関氏は、「米国とだけは強固で、近隣国とは話もしない、あるいは『できない』弱体な安全保障などあり得ない。/しかも、日米安保体制下の日米同盟を強固にすればするほど、日本は近隣国との対立を深くすることになる」と直言している。元海上自衛隊幹部で軍事ライターの文谷数重氏の「尖閣はどうなっているか」、ジャーナリストの島本慈子氏のルポ「いま宮古島で何が起きているか」も説得力があった。  
荒屋敷 宏
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号
 
posted by JCJ at 01:00 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする