2021年09月11日

【被爆から76年・広島】核禁条約に首相触れず 姿勢象徴する読み飛ばし=難波健治

  核兵器禁止条約が発効して初めて迎えた「原爆の日」の6日、広島市の平和記念式典に出席した菅義偉首相は、式典あいさつで核禁条約には一言も触れず、その後開かれた記者会見で「条約には署名しない」と明言した。また、市民ら国際社会が強く求める第1回締約国会議へのオブザーバー参加さえ消極的な姿勢を示し続けた。
 広島平和記念公園で行われた式典は今年もコロナ対策で一般席は設けず、被爆者や遺族、国内外の政府・政党代表や大使ら約750人が参列した。
 その式典で菅首相は、事前に用意した原稿の一部を読み飛ばした。その部分には、「核兵器のない世界の実現に向けて力を尽くします」という自らの決意と、「わが国は、核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国であり」という政府の立場の根幹部分があった。
 平和記念式典は、原爆の犠牲にあった多くの人々を弔い、世界から核兵器をなくすことを誓う特別の場である。読み飛ばした結果、意味が通らない形になったが、首相はそのまま読み続けた。まさに、菅政治を象徴する場面となった。
 首相はあいさつの冒頭でも、「広島市」を「ヒロマシ」、「原爆」を「ゲンパツ」などと読み違えて言い直した。
 また広島市と被爆者団体はこの日、原爆投下時刻の8時15分に東京五輪の選手村などで黙とうの呼びかけをするよう国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長や組織委員会に求めていたが、IOCは応じなかった。
難波健治(広島支部)
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号

posted by JCJ at 00:00 | 中国・四国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする