2021年09月19日

【今週の風考計】9.19─総裁選:百鬼夜行の醜い権力闘争が招くもの

★もう、うんざり。テレビをつければ各チャンネルとも、朝から夜まで、自民党総裁選4候補の「生出演」やら「生直撃」などのワイドショーや報道ばかり。この10日間で流された総裁選がらみの番組は20を超える。
 競馬レースの勝ち馬予想さながら、各派閥の水面下の動きを追いかけ、票割れを狙って刺客を送ったとか、決選投票では野合が組まれるとか、自民党幹部4Aは密約を交わしたとか、あれこれ報じている。

★自民党議員は議員で、派閥の領袖に気を使い、顔色を覗いながら勝ち馬に乗ることばかり考え、右往左往している。しかも安倍前首相は、当選3回以下組の「安倍チルドレン」議員に、派閥を越えて圧力をかけ、<安倍院政>を目論む始末だ。
★国民は「安倍・菅政治を引き継がない」政権を望んでいる(58%)のに、4候補とも安倍キングメーカーを忖度して「継承」に傾き、そろって改憲を言い、原発再稼働を容認する。
 コロナ禍のなか、変異株が広がり病床は逼迫したまま、在宅でのコロナ感染死亡者が8月には全国で250人を超えるのに対策は取らず、国民そっちのけで権力闘争に明け暮れる。もう世も末だ。

★今日9月19日は、今から6年前、安倍政権が憲法9条の解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認める安保法制を強行成立させた日。「平和への思いを忘れない日」である。
 憲法の立憲主義や平和主義が踏みにじられ、後方支援や武器使用の拡大により、自衛隊が海外で武力行使する危険性は増す。
★安倍政権が進めてきた、これらの政策が、今どうなっているのか。分析も総括も抜きに継承されたらたまったものではない。
 もっと深刻なのは「森友・加計」問題や「桜を見る会」で露わになった政治の私物化、公文書改ざんでは自殺者まで生み出した行政の基本を破壊する暴挙、これらの政治家としての個人責任が問われる深刻な問題にソッポを向いて、「無責任の体系」を継承するのは許されない。

★安倍政権を継承した菅政権、あっけなく1年で閉じた。この間、自分の言葉で国民に語りかけたことがあっただろうか。
 コロナ禍であればあるほど、国民の生活や仕事に寄り添って、実際の状況をつかみ、気持ちを寄せる心のこもったメッセージが不可欠だったのに、聞いた覚えはない。
 代わりに聞くのは飲酒禁止、外出抑制、自粛要請など、責任はすべて現場に押しつけるばかりの指令だった。
★しかも野党の招集要求にもかかわらず、国会は開かず、6月9日の党首討論以降、3カ月半も国会審議の場から逃げている。総裁選不出馬の記者会見も2分で打ち切り。

★「ガースーです。好物はパンケーキ」で始まった菅首相、最後っ屁のように、23日から「卒業旅行」よろしく、「Quad」(クアッド)会議に参加するため米国へ外遊する。
 怖いのは、その内容である。日米豪印4カ国の首脳が集まり、海洋安全保障を巡って対中国包囲網を討議する。外交・防衛には経験のない首相が、どんなお荷物を背負わされるのか不安がよぎる。「次の政権に継承する」というが、「置き土産」にされるのではかなわない。(2021/9/19)
posted by JCJ at 06:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする