2021年09月24日

【おすすめ本】横井久美子『横井久美子 歌手グランドフィナーレ 歌にありがとう』─人々を励まし歌い続けた生涯を偲ぶ=隅井孝雄(JCJ代表委員)

私が横井さんを知ったのは1969年、労組の平和・反戦集会で彼女に歌ってもらったことがきっかけで、ほぼ半世紀の交友が始まった。
 本書では歌を通して知りあった、活力ある人々との交友の中で成長を遂げた、歌手・横井久美子の足跡が、完ぺきに再現されている。
 歌手としての活動の合間、折々に綴った歌にかける思い、活動の記録、先輩、友人、知人、家族などとのふれあいについて、これまで書いてきた様々な文章を、横井さんが闘病の日々の中で、一冊にまとめた労作だ。

 歌手活動は日本国内のみならず、1973年アメリカと闘うベトナムの兵士らと、ハノイで「戦 車は動けない」を歌ったのをはじめ、アジア、ヨーロッパ、南米など世界を駆け巡っている。
 また音楽の教えを受けたアイルランドには何度も訪れ、晩年にはネパールの山村に通い、子供たちの音楽ホールを建設するなど、その足跡は世界各地にわたっている。
 1978年の「ノーモアスモンの歌」にみられるように、人々を励まし続け、人生の賛歌を歌い続けてきた横井さんは、2019年8月アイルランドの旅から帰国後、腎臓がんと診断され、闘病生活に入った。そして再起の願いも込めて、本書の出版を企画、夫の友寄英隆さんに支えられ執筆、編集したものの、ガンは容赦なく、今年1月14日彼女の命を奪った。
 本書の最後に自身のブログに書いた1年3カ月に及ぶ闘病記録も収録されている。帰らぬ人となった横井さんの人生に、哀惜を込め拍手を送りたい。(一葉社2200円 )
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posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする