2021年10月18日

【支部リポート】神奈川 「カジノはいらない」横浜市長選に市民の思い=伊東良平

 神奈川支部では横浜におけるカジノを含むIRを反対する立場から、横浜カジノの是非を自ら決めようという「市民の会」などの活動を追跡取材して支部通信に掲載してきたが、その審判となったのが、8月22日に投開票が行われた横浜市長選挙であった。
 大きく報道されたように、カジノの「断固反対、即時撤回」を訴えた立憲民主党推薦の元横浜市立大学教授・山中竹春氏が現職閣僚を辞めて立候補した自民党の小此木八郎氏をはじめ過去3回当選の現職市長、元県知事の2人らを抑えて当選を決めた。菅首相のお膝元で全面的に支援した小此木氏の敗北はその後の菅首相の総裁選不出馬=事実上の退陣につながったのはご存じのとおりである。
 山中氏は医学部教授の立場でコロナについてテレビのワイドショーにゲスト出演していたとはいえほとんど無名の新人である。その知名度アップのために「市民の会」などの諸団体や労組、市民ボランティアが一体となって草の根的な宣伝活動を行った。多くの駅前でのビラ配布や政策チラシのポスティングなど、押し上げに力を発揮した。
 自民・公明が事実上応援した小此木氏が「IR誘致取りやめ」を表明したために、自民党の一部市議がIR推進の林前市長を支持して保守分裂に助けられた面もあるが、IRを反対する候補者も田中康夫氏など知名度のある人が立って票が割れたことを考えると、山中氏の善戦は際立っている。
 コロナ対策が後手となった菅政権の中で、横浜市はさらにワクチン接種が遅れるなどの状況であり、専門の立場で「データと科学的知見に基づくコロナ対策」を政策に掲げて、カジノだけでなく、コロナで得票を伸ばしたのが大きかったと言える。
 山中新市長は9月10日市議会で、IR誘致の撤回を正式に表明した。ここに2014年以来8年間続いてきたカジノ反対運動にピリオドが打たれた。結果が出た後で敗戦の辞を述べた林前市長は「IR誘致表明以来、反対の嵐のなかを生きてきた」と述べたが、反対の嵐を呼び寄せたのは、カジノはいらないという一人ひとりの市民の熱い思いが作った大きな台風の眼であった。
伊東良平
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 関東・甲信越 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする