2021年10月23日

【映画の鏡】『屋根の上に吹く風は』─冒険に満ちた自由な教育 主体的・対話的で深い学びとは=鈴木賀津彦

屋根の上に吹く風は※メイン2.jpg
cSAKAE ASADA

 コロナ禍の今、オンライン教育で四苦八苦している都会の学校教育と対比しながら見ると、とてもタイムリーな映画だと感じた。
 鳥取県智頭町の山あいの里山にある新田サドベリースクールという「学び舎」の素顔を、1年以上にわたり追ったドキュメンタリー。子どもたちが屋根の上に助け合いながら登り、怖がりながらも飛び降りにチャレンジするシーンから始まるのが象徴的だ。

 スクールの説明書には「先生・カリキュラム・テスト・評価のない学校。子ども達の好奇心に沿った遊びや体験から学んでいく学校です。何をして遊ぶか、何を学ぶか、すべて自分で決める自由があります」とある。それで学校なの?と言われるかもしれないが、ご指摘の通り学校としては認められず、いわゆるフリースクールである。

 少々型破りにも見えるが、子どもの主体的な学びを重視して、ルールづくりからサポートの大人のスタッフを選挙で決めることまで、子供の意思を尊重する徹底ぶりはみごとだ。「なんでもやってみたらいいんよ」「みんなで話し合ってみたら」。大人が指示を出さないように悩みながら子どもと対話する様子は、従来の「教えるプロ」としての教師像を打ち破ってくれる。

 大人の対応に、実は子どもたちも悩む。自由って何だろう? 指示されないので何もしなければ、ただ退屈な時間だけがすぎていく。「案外、自由って難しい?」

 この子どもと大人の葛藤、これって新しい学習指導要領が強調する「主体的、対話的で深い学び」の実践だよね、と気付かされる。指導要領の解説映像にしてほしい作品だ。浅田さかえ監督。2021年10月 ポレポレ東中野ほか全国順次公開予定
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする