新型コロナウイルス感染症の感染者激減で、プロ野球やJリーグは、来シーズンからの正常化を実現する意気込みだ。
観客制限が続いたプロ野球の今シーズンの観客数は、より規制の厳しかった昨シーズンからの緩和を政府に要望したこともあって、6割増しになったとはいえ、感染拡大前の2年前のシーズンの3分の1にすぎなかった。 正常化は切実だが、日本シリーズでは延長戦を復活させるなど焦りも感じられる。
高校部活動の大会や対外試合は2年連続して規制下に置かれ、在学中に正常な活動を経験できないまま卒業する悲劇的な競技生活の恐れもある。まして市民スポーツレベルでは、正常化の見通しが立たず、グループの解散、縮小の危機に直面している。
スポーツ庁は競技団体経営の効率化を訴えるばかりで、国民の競技環境改善の方途を示さない。強調されてきた東京五輪の国民スポーツへの遺産は、巨額を投じた競技会場の維持難という負の遺産だけなのか。
メダル獲りを煽った民放テレビは、相変わらず五輪メダリストの番組タレント化を狙い、卓球の銀メダリストが大ケガをする事故まで起こした。
11月に入って晴天が多かったため、公園で運動不足解消のマスクをしたランニング姿を多く見かけたが、国民の欲求不満は高まるばかりらしい。 しかし、日本スポーツ協会は知らんふりである。政府の無策ぶりが伝染して、公的なスポーツ振興機関の怠慢が、スポーツ関係者の焦りを生んでいるようだ。
WITHコロナのスポーツライフは、屋内で個人的に、ということか。オンラインでゲームに取り組めばいいとでも言わんばかりだ。コロナ禍で、国民のスポーツ権無視が目に余る。
政府が経済活動活性化に集中して、会食や旅行の規制緩和に動いても、国民の生活再建は見通せない。
マスメディアは、多方面からの安全、安心な再建策を提示する努力が必要だろう。
大野晃(スポーツジャーナリスト)