中国と北朝鮮が鉄道貿易の再開を準備中だという。韓国統一部当局者が11月4日、そのように語ったと「聯合ニュース」4日付が報じた。ただし、具体的な再開の時点は予想できないという。
ここへ来て、中朝の鉄道貿易が再開の兆しを見せ始めた背景には何があるのか。新型コロナ禍で長引く国境封鎖によって、北朝鮮で物資が枯渇していることは想像にかたくない。
最近開かれた国会にあたる最高人民会議などでは、資源や原材料の再利用が再三強調されている。それだけ、原材料が不足していることの証だろう。物資の不足を何とか解消するためには、少しずつでも海外から物資を輸入する必要が生じているのではないか。それには貿易の90%を占めると言われる中国との貿易を本格的に再開することが一番の解決策だ。
もちろん、これまでも中朝貿易が完全に遮断されていたわけではないだろう。少し前には船を使って海上で物資を搬入しているという報道もあった。個人的な貿易がストップしているかどうかは確認のしようがない。今年3月から少しずつ貿易が再開されていたとも報じられてもいる。ただし、新型コロナ禍前の水準に回復しているとは到底言えないだろう。
ところで、鉄道を使った貿易というが、北朝鮮では列車がよく止まったり、遅延したりする。私も何度か列車で平壌から地方に行ったことがあるが、時間どおりに目的地に着けたためしがない。途中の駅で夜を明かすこともあるほどだ。
だが、そのおかげで北朝鮮の人々のたくましさを垣間見ることができた。線路上に、列車の客を目当てにした市が立つのだ。お弁当や酒、果物などを売る商売人たち。なかには洗面用の水を売る子供もいた。
ネットフリックスで配信中の「愛の不時着」でも、列車が止まると商売人たちが駆けつけて物を売るシーンが登場するが、北朝鮮での体験を思い出して、懐かしかった。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号