JCJのオンライン講演会が総選挙投票前日の10月30日に開かれ、ビデオジャーナリストの神保哲生氏と砂川浩慶立教大学教授が「メディアの地殻変動―政治・選挙報道変わるときー」をテーマに論じ合った。
冒頭、神保氏は、投票率がOECD加盟諸国の中でも異常に低いことについて「主権者が主権行使に資する情報を正確に提供するというメディア最大の責務を、メディア自身が果たしていないからだ」と批判した。
実際、今回の投票率は小選挙区選で55・93%と戦後3番目の低水準に終わり、テレビの報道も質量ともに低調で、神保氏の指摘が的中した。
神保氏は「公職選挙法の縛りがあって、公示後は報道が制約される。自由な選挙報道ができるよう公選法改正をすべきだ」と問題提起した。
脱炭素社会の問題について神保氏は「デンマークは80%が再エネ、ノルウエーでは来年からガソリン車が無くなるなど、ヨーロッパでは再エネが進んでいる。日本はトヨタが強く『EV車にはならない』と平気でメディアに流す」と指摘し、追及が弱いメディアを批判。
政治とメディアの関係については「日本では政治、経済、行政などの情報については、既存メディアが99・99%のシェア握っている。
報道の原材料と言うべき大元の情報を手にするのは既存メディアで、私はドアの外で待っている。情報は記者クラブに独占され、大元で栓が閉められ、フィルターがかけられる。そのヤバさを認識してほしい」と強調した。
メディアは、政府から多くの特権的な地位を得ている。神保氏は「官邸官僚は、メディアの特権享受をテコに、さじ加減をしながら、操作できる。内閣記者会の記者に出させている質問書のテニオハにまで介入する」と、メディアの劣化を厳しく指摘した。
砂川教授に「メディアの地殻変動」について問われた神保氏は、メディア間の相互批判能力を高めるため、新聞と民放のクロスオーナーシップ(資本提携)の見直しを提唱。さらに「(ネットメディアなど)新しいメディアが登場しているのだから、情報をブロックすることを早くやめてほしい。情報が本当に行き渡るかどうか。ここに、日本の政治報道の浮沈がかかっている。ぜひ、声を大にして言いたい」と訴えた。
河野慎二
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号