高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた全国初の文献調査が進む北海道寿都(すっつ)町で10月26日、任期満了に伴う町長選挙が投開票された。文献調査の是非が最大の争点となり、調査継続を訴えた現職の片岡春雄氏(72)が、調査撤回を掲げた元町議の越前谷由樹氏(70)を破り、6選を果たした。得票は片岡氏1135票、越前谷氏900票。投票率は84・07%だった。
同日行われた町議補欠選挙(改選数1)は両陣営が擁立した新人同士の一騎打ちとなり、越前谷陣営の支援を受けた候補が勝利した。町長選とは逆の結果となり、民意の複雑なねじれを示した。
文献調査への応募は片岡町長が議会の議決を得ずに独断で決定した。越前谷氏は片岡氏の強引な町政運営により、町民の間に大きな分断が生まれたと批判。片岡氏は文献調査の次の段階となる概要調査に進む前に賛否を問う住民投票を実施すると約束し、町民の意思を尊重して結論を出す姿勢を強調した。
北海道新聞が報道した出口調査結果によると、町長選に投票した有権者のうち44%が「調査撤回」を支持。「調査継続」に理解を示したのは33%で、撤回派が上回った。
文献調査は原子力発電環境整備機構(NUMO)により同町など2町村で昨年11月から行われている。調査を受け入れた自治体に国が支給する交付金は周辺自治体分を含め2年間で20億円。同町は今年度、9億2500万円を受け取る。配分を拒否する自治体もあり、自治体間にも分断が生まれている。
山田寿彦(北海道支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号