2021年12月24日

【映画の鏡】真の復興問う浪江の現実 『ひとと原発〜失われたふるさと』町民の切なる想い伝える=鈴木賀津彦

原発事故から10年、復興五輪が開かれた今年、福島県浪江町から避難した町民の本音を伝え、真の復興を問う作品として、自主的上映活動が少しずつだが広がっている。
浪江町に通い避難者たちの生活を追い続けた映画監督の板倉真琴さんが、企画から撮影・編集まで一人で取り組んだドキュメンタリーだ。
「悔しい…、原発事故でふるさとを失った浪江町民の多くの方が口にする言葉です。震災から10年が過ぎた今も約95%の住民はふるさとへ戻っていません。帰りたいけど帰れない…、浪江の方たちのお話に耳を傾けるとマスコミ等が伝える復興の姿とはほど遠い現実が見えてきます。ひとにとって、真の復興とは…。この映画は14名の浪江町民の切なる想いがつくった作品」と説明する板倉さん。
津波被害で動けない人たちを救助しようとした朝、原発事故での避難命令は救助に向かう消防団にも。助けられたはずの請戸地区の大勢の命が失われた「請戸の悲劇」のほか、一人ひとりに起きたことを振り返りながら、避難者たちが今の生活の中から語った想いをつないでいく。
板倉さんといえば、富司純子、寺島しのぶが共演して話題になった映画「待合室」の監督。東北の小さな駅の待合室に人知れず置かれた「命のノート」に励ましの返事を書き続ける女性の実話を描いたエンターメント作品だが、作品の位置づけは違っても、監督の視線に不思議な共通性を感じた。
DVDを2000円(送料別)で販売、非営利なら購入したDVDで上映会を実施して、より多くの人に見てもえるよう工夫している。問い合わせは板倉さん=電090(1261)0426。
鈴木賀津彦
岡さん御夫婦.bmp

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする