2021年12月25日

【総選挙報道・放送】総裁選より軽く扱う 政権総括も政策検討も不十分=今井潤

 今回の総選挙についてテレビは、公職選挙法の縛りを必要以上に意識した報道に終始した。
朝日は10月29日「衆院選控えめなテレビ、総裁選より放送短く」と伝えた。その中で、自民党総裁選と衆院選の放送時間を比較した。NHKと在京5社の総裁選告示と衆院選公示の日とその前後二日ずつを比べると、総裁選は29時間55分だったのに対し、衆院選は25時間52分だった。衆院選の方が4時間短かった。テーマを自由に取り上げ易い情報番組などでは総裁選が14時間31分に対し衆院選が8時間25分と差が広がった。「放送を語る会」が行った衆院選のテレビ報道モニターにも選挙報道が不十分だったという報告が届いている。放送時間が足りない

 放送時間足りず
 10月14日衆議院解散当日のNHK「ニュースウオッチ9」は、解散を21分間放送したが、安倍・菅政権の総括をする選挙だという位置づけをせず、野党の政策も説明不足だった。街頭インタビューでは「政治家のための日本でなく、国民全体の日本にしてほしい」と政権に批判的な声を放送したのが目立つ位だった。
 TBS「NEWS23」は10月26日、「同性婚」の問題を取り上げ、星コメンテーターが「選挙で争点になるのは初めて」と指摘。「自分らしく生きていける社会を望む」と街の声を伝えた。同番組は27日も、野党共闘の象徴区である東京5区を取り上げたが、候補者の政策や有権者の
声をもっと時間をかけて報道すべきだ、野党共闘の意義を分析すべきだとの批判が寄せられた。核心衝く学生の感覚

 核心を衝く感覚
 テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」は10月26日、スタジオに憲法学者の木村草太氏と慶応大学の女子学生を招き、「衆院選争点第5弾」と銘打って、憲法をテーマに掘り下げた。北朝鮮のミサイル発射に対し、敵基地攻撃能力保有は9条との関連で自衛のために許されるのか
を巡って、パネルを使い議論した。羽鳥キャスターが9条の条文を読み上げて、主権国家としては自衛権は認められていると指摘。木村氏は「日本への攻撃の意図がない国を攻撃することは違憲だ」と述べた。慶応大学の学生が「そもそも相手の国と仲良くしよういうゴールをめざして論じることが基本だ」と発言。これを受けてコメンテーターの玉川徹氏は「どうしたら仲良くなれるかというのがゴール。それが平和を願う9条だ」とコメントした。若い人の感覚は極めてシンプルな物言いだが、核心を衝く発言だった。衆院選の争点報道に努力するスタッフの意気込みが伝わってくる番組内容になっている。

 ネット積極報道
  テレビ基幹ニュースの選挙報道が低調な中で、放送法の縛りを受けないネット番組の情報発信が目を惹いた。望月衣塑子・東京新聞記者らが出演する「デモクラシータイムス」、作家の本間龍氏らが出演する「一月万冊」など、多数のユーチューブ番組が情報を連日提供した。
 「毛ば部とる子」という番組はドイツに住む日本の女性ライターが日本政治についてリポートする番組で、維新の躍進について2日、以下のように伝えた。
  議席を4倍化した維新の集票力はどこにあるのか。「維新は大阪市議会、府議会に多数の議員がおり、その議員に一日600本の支持拡大の電話をかけるノルマを課している」とリポート。「維新という政党は風頼みと言うのは間違いで、実態は公明や共産より組織的な活動をする政党だ」と警戒するよう呼びかけた。
 ネット報道への注目度は、来夏の参院選に向けさらに高まりそうだ。
今井潤(放送を語る会)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年11月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 選挙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする