2022年01月31日

「絶望45%」に届く言葉を 野党共闘 安保政策も重要 市民連合@新潟 佐々木寛氏に聞く=須貝道雄

                          
オンラインでのインタビューに答える佐々木寛さん(21年12月29日).jpg
   
 国政選挙で野党共闘が4連勝した新潟県。そのキーマンとされる市民連合@新潟の共同代表で、新潟国際情報大学教授の佐々木寛さん=写真=に、政治と野党共闘のあり方を聞いた。
 ご祝儀相場の面
◆昨年の総選挙では日本維新の会が増え、憲法改悪を叫んでいる。
「維新の会を過大にも過小にも評価してはいけない。今回の結果は前回衆院選(2017年)で希望の党がとった約1千万票を、維新の会と国民民主党が分け合った形だ。現状のシステムを維持しながら何とかしてくれと望む『改革保守』の人々の素朴な心理をくすぐった。盤石な支持ではなく、一種のご祝儀相場といえる」
「一方で、甘く見てはならない。メディアを取り込み、ワンフレーズで大衆の心理をすくい取る。たとえば『身を切る改革』。自分たちの政治は自己利益のためにしているのではないと訴えた。大阪ではコロナ対策でも経済対策でも客観的には維新の会は結果を出していない。しかし、既存システムに漠然たる違和感を持つ層の支持を吸収している」

ファシズムの危険
◆投票率が約56%と戦後3番目の低さだった。
「だれが政権をとっても世の中は変わらないと政治に絶望している人は投票に行かなかった。その層が45%近くいる。貧富の差が拡大し、不安は募っているのに」
「今の日本は、ファシズムの予兆という点で、第2次世界大戦前のドイツに似ている。賠償金問題で社会不安が増すなか、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)が選挙で勝った。名前だけ見れば左翼(革新)政権だ。不安にさいなまれた人たちから大喝采を浴びた。火をつけるきっかけさえあれば、日本でも同様のことが起こり得る。維新の会の大衆操作政治は油断できない」
◆絶望の根源には何があるのか。
「大学で思うのだが、今の若い人たちは公的な場で必要とされ、称賛された経験が皆無だ。公的なことは遠い存在で、意味のないものと見ている。公的空間から排除され、最初からゲームに参加できていない。貧困とともに大きな問題だ。総選挙の投票日(21年10月31日)にハロウィンでうかれる若者らがいた一方で、電車内で刃物をふるった男がいた。今の絶望の社会現状を象徴している」

新味いかに出すか
◆野党共闘は効果がないのか。今後の方向は。
「先の総選挙では与党の自民・公明と野党共闘は各選挙区で四つ相撲となり、差しでよい勝負をした。新潟に限れば野党は4勝2敗だ。共闘が無かったら、こんな結果は出ない。それを失敗と見るのは科学的な評価ではない。メディアの論調もしかりで、自分で考える力のある記者が減った気がする」
「今後の野党共闘は従来のやり方を踏襲するだけではだめだ。新味を出さなければ魅力を失う。与野党の枠組みを超えて、永田町(既存の政治体制)そのものを撃つ、高次の新しいアプローチをしないと、絶望する45%の人たちに届かない」
「国家主義、ナショナリズムの台頭に手が付けられない事態になる前に、野党共闘の側が『国をどう守り、立て直すか』を先に提起し、主導権を握ることも重要だ。安全保障についても、地球の気候危機についても、厚みを持った政策を訴え、今後、米国や中国とどう付き合うのかも明らかにする。代案を示して有権者に浸透させることが欠かせない。新潟の体験から大切と思うのは、人間関係の網の目を密に作り上げる地道な努力。それがリアルな力を生む」
聞き手・須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年1月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 選挙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする