国家公務員採用総合職(キャリア)試験への申込者数が激減している。2021年度は1万7411人と過去最低で、5年連続ダウン。ピークの1996年の4万5254人より2万8000人近くも減っている。キャリア官僚不人気≠フ主因は労働環境が悪いからだ。残業は過労死ラインの月80時間は当たり前の状態である。国会開会中ならば、国会議員へのレクチャーや資料作りに忙殺される。「月200時間の残業で休みが1回だけだった」とテレビに出演したコメンテーターの元官僚は暴露した。エリート官僚と言えば、東大出身者が思い浮かぶ。キャリア試験合格者のうち東大は2000年度では三分の一を超えていたが、21年度は19%程度まで減少した。
中途退職者増える
霞が関には政府が唱える働き方改革は広がっていない。こうした状況の霞が関から逃れる中途退職者は増えている。20年は経済産業省の若手官僚が20人以上も退職し話題になった。報酬が高そうなITやバイオなど最先端企業に転職した人もいたそうだ。
モラル低下も著しい。コロナ対策の家賃支援給付金など約1500万円を20代の経産省官僚2人がだまし取った事件は、知り尽くした制度につけ込んだ極めて悪質な犯罪だった。まさに国民への背信行為だ。
官僚の思考もガラリと変わった。かつては「長時間残業をいとわず国や国民のために尽くす」という殊勝なマインドを持った人がいた。しかしそんな官僚はほぼいない。
竹中が空気変える
元朝日新聞記者で政治ジャーナリストの鮫島浩さんが言う。
「小泉純一郎政権の経済財政担当相として入閣した竹中平蔵(現パソナグループ会長)が霞が関の空気を一変させた。彼は官僚を引き立て出世コースに乗せた。竹中が主張する弱肉強食の新自由主義が官界に浸透し、滅私奉公的な考えは影を潜めた。多くの情報が集まる竹中に近づき高収入の民間などへの転職の道が開けるようになった。政治家にアゴでこき使われ、民間で働く大学の同期と比べ安い給与で深夜まで働かされる今のエリート官僚は、国家のためや弱者を救うなんて少しも考えていない。CEO(最高経営責任者)やどこかの企業の幹部ポストを狙っている。このため企業情報が入手しやすい規制改革の部署に行きたがる」
政策立案のかなめである官僚の劣化は、国家にとって危うい事態ではないだろうか。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年1月25日号

