2022年05月28日

【オピニオン】露「ウクライナ侵攻」に便乗 改憲、核武装の世論づくり 迫られる「平和」守る覚悟=丸山重威

 ロシアのウクライナ侵攻に便乗して、日本の右翼・軍拡勢力が、改憲と核武装を主張する世論づくりに躍起だ。安倍元首相の「核共有論」や、国家基本問題研究所(櫻井よし子理事長)の「9条で国は守れるのか」の「意見広告」はその代表だ。

 核「威嚇」利用し
 核武装の検討主張


 プーチン露大統領は2月24日、「ウクライナの現政権に虐待された人々を保護し、同国を脱ナチス化するために、軍事作戦の実行を決めた」と発表したが、併せて「現代のロシアは、世界でも最も強力な核保有国の一つ」「ロシアへの直接の攻撃は侵略者の壊滅と悲惨な結果につながる」と、核兵器で威嚇した。
 国際的にも批判が高まった「核威嚇」発言だが最初に「便乗」したのが安倍晋三元首相。27日午前のフジテレビで、米国の核兵器を自国領土内に配備・運用する「核共有(ニュークリア・シェアリング)を日本でも議論すべきだ」と述べた。 「日本は核拡散防止条約(NPT)の加盟国で非核三原則があるが、世界はどのように安全が守られているか、議論していくことをタブー視してはならない」とも。早速産経新聞3月1日付主張が「国民守る議論を封じるな」と追随、「文芸春秋」5月号は、安倍氏のほか、E・トッド氏の論文「日本は核武装を」を掲載。特集を組んだ。

 「国を守れない」と
 憲法九条でを攻撃


 もうひとつ、目立つのが、「9条では国を守れない」という「憲法9条攻撃論」。3月13日の自民党大会で岸田文雄首相は、ウクライナ侵略をあげ、「防衛力の強化と党是の改憲の実行に取り組む」「そのための力を得る闘いが参院選」と主張した。自民党は「憲法改正推進本部」を「実現本部」に変更、全国で集会を開いて国民世論を喚起する方針だ。
ロシアの侵略を「だから軍隊を持って対抗しないといけない」とみるか「軍事力の強化は軍事対決・挑発を激化させる。非武装・不戦の九条の意議はますます大きい」とみるか―。九条の会は2月25日「ウクライナ侵略とそれを口実にした9条破壊、改憲は許さない」と声明した。

 九条の会「声明」
 不戦の意義広める


 自民党は、この春、憲法審査会の毎週開催を主張し。実際にこれが進んだ。衆院憲法審査会の新藤義孝自民党幹事は、4月10日、フジテレビで、「憲法9条の最大の問題は国防規定がないことだ」と主張。「この議論は憲法審査会でぜひやりたい。安全保障に対する議論はこれから…」と述べ、動き出した。
 世界が武力で対立する中で、日本が不戦・非武装を貫き、平和と安全を守るか。ウクライナ問題は、その「覚悟」を日本人自身に迫っている。
  丸山重威
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年4月25日号
  
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | オピニオン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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